マンション標準管理委託契約 3(第11条~第24条)

第11条【有害行為の中止要求】

乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げる行為の中止を求めることができる。
  1. 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
  2. 建物の保存に有害な行為
  3. 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為
  4. 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為
  5. 組合員の共同の利益に反する行為
  6. 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
  1. 乙が、前項の規定により中止を求めても、なお甲の組合員等がその行為を中止しないときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は甲が行うものとする。
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第12条【通知義務】

甲及び乙は、本マンションにおいて滅失,き損,瑕疵等の事実を知った場合においては、速やかに、その状況を相手方に通知しなければならない。
  1. 甲及び乙は、次の各号に掲げる場合においては、速やかに、書面をもって、相手方に通知しなければならない。
  1. 甲の役員又は組合員が変更したとき
  2. 甲の組合員がその専有部分を第三者に貸与したとき
  3. 乙が商号又は住所を変更したとき
  4. 乙が合併又は会社分割したとき
  5. 乙がマンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12 年法律第149 号)の規定に基づき処分を受けたとき
  6. 乙が第18 条第2項第1号及び第2号に掲げる事項に該当したとき

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管理規約等に組合員の住所変更や長期不在等について届出義務を設けている場合は、本条第2項に適宜追加することが望ましい。

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第13条【専有部分等への立入り】

乙は、管理事務を行うため必要があるときは、甲の組合員等に対して、その専有部分又は専用使用部分(以下「専有部分等」という。)への立入りを請求することができる。
  1. 前項の場合において、乙は、甲の組合員等がその専有部分等への立入りを拒否したときは、その旨を甲に通知しなければならない。
  2. 第1項の規定にかかわらず、乙は、第8条第1項各号に掲げる災害又は事故等の事由により、甲のために緊急に行う必要がある場合、専有部分等に立ち入ることができる。この場合において、乙は、甲及び乙が立ち入った専有部分等に係る組合員等に対し、事後速やかに、報告をしなければならない。

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第1項に規定する管理事務は、その都度管理組合の承認の下で行われるものであり、管理組合の協力が不可欠なものである。
組合員等が、正当な理由なく、マンション管理業者(又は再委託先の業者)の立入りを拒否したときは、第2項によりマンション管理業者はその部分に係る管理事務の実施が不可能である旨を管理組合に通知するものとする。 マンション標準管理委託契約TOPに戻る

第14条【管理規約の提供等】

乙は、宅地建物取引業者が、甲の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために管理規約の提供及び次の各号に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供し、及び各号に掲げる事項を書面をもって開示するものとする。
  1. 当該組合員の負担に係る管理費及び修繕積立金等の月額並びに滞納があるときはその金額
  2. 甲の修繕積立金積立総額並びに管理費及び修繕積立金等に滞納があるときはその金額
  3. 本マンション(専有部分を除く。)の修繕の実施状況
  4. 本マンションの石綿使用調査結果の記録の有無とその内容
  5. 本マンションの耐震診断の記録の有無とその内容(当該マンションが昭和56年6月1日以降に新築の工事に着手した場合を除く。)
  1. 前項の場合において、乙は、当該組合員が管理費及び修繕積立金等を滞納しているときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措置を求めることができるものとする。

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  1. 本条は、宅地建物取引業者が、媒介等の業務のために、宅地建物取引業法施行規則第16 条の2等に定める事項について、マンション管理業者に当該事項の確認を求めてきた場合の対応を定めたものである。
    本来宅地建物取引業者への管理規約等の提供・開示は管理組合又は売主たる組合員が行うべきものであるため、これらの事務をマンション管理業者が行う場合には、管理規約等においてその根拠が明確に規定されていることが望ましい。
    また、マンション管理業者が提供・開示できる範囲は、原則として管理委託契約書に定める範囲となる。一般的にマンション内の事件、事故等の情報は、売主又は管理組合に確認するよう求めるべきである。
  2. 管理規約が電磁的記録により作成されている場合には、記録された情報の内容を書面に表示して開示することとする。
  3. 開示する情報としては、管理費等の改定の予定及び修繕一時金の徴収の予定並びに大規模修繕の実施予定(理事会で改定等が決議されたものを含む。)がある場合にはこれを含むものとする。
  4. マンション管理業者が受託した管理事務の実施を通じて知ることができない過去の修繕の実施状況等がある場合には、マンション管理業者は管理組合から情報の提供を受けた範囲でこれらの事項を開示することとなる。
  5. 管理規約の提供等に係る費用については、誰が負担するのか(宅地建物取引業者等)、その金額、負担方法等について、別途、明かにしておくことが望ましい。

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第15条【乙の使用者責任】

乙は、乙の従業員が、その業務の遂行に関し、甲又は甲の組合員等に損害を及ぼしたときは、甲又は甲の組合員等に対し、使用者としての責任を負う。

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第16条【守秘義務等】

乙及び乙の従業員は、正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た甲及び甲の組合員等の秘密を漏らしてはならない。この契約が終了した後においても、同様とする。
  1. 乙は、甲の組合員等に関する個人情報について、その適正な取扱いの確保に努めなければならない。
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  1. 第1項は、適正化法第80 条及び第87 条の規定を受けて、マンション管理業者及びその使用人の守秘義務を定めたものである。なお、適正化法第80条及び第87条の規定では、マンション管理業者でなくなった後及びマンション管理業者の使用人でなくなった後にも守秘義務が課せられている。
  2. 第2項は、マンション管理業者は、その業務に関して個人情報に接する機会が多く、個人情報の保護に関する法律の適用を受ける事業者が本法令等を遵守することはもとより、適用を受けない小規模事業者等も「国土交通省所管分野における個人情報保護に関するガイドライン」に準じて、個人情報の適正な取扱いの確保に努めるものとされていることを踏まえた規定である。

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第17条【免責事項】

乙は、甲又は甲の組合員等が、第8条第1項各号に掲げる災害又は事故等(乙の責めによらない場合に限る。)による損害及び次の各号に掲げる損害を受けたときは、その損害を賠償する責任を負わないものとする。
  1. 乙が善良なる管理者の注意をもって管理事務を行ったにもかかわらず生じた管理対象部分の異常又は故障による損害
  2. 乙が、書面をもって注意喚起したにもかかわらず、甲が承認しなかった事項に起因する損害
  3. 前各号に定めるもののほか、乙の責めに帰することができない事由による損害

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第18条【契約の解除】

甲及び乙は、その相手方が、本契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、本契約を解除することができる。この場合、甲又は乙は、その相手方に対し、損害賠償を請求することができる。
  1. 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するときは、本契約を解除することができる。
  1. 乙が銀行の取引を停止されたとき、若しくは破産、会社更生、民事再生の申立てをしたとき、又は乙が破産、会社更生、民事再生の申立てを受けたとき
  2. 乙が合併又は破産以外の事由により解散したとき
  3. 乙がマンション管理業の登録の取消しの処分を受けたとき

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第2項第1号に規定する「銀行の取引を停止されたとき」とは、「手形交換所の取引停止処分を受けたとき」、また、「破産、会社更生、民事再生の申立て」とは、それぞれ「破産手続開始、更生手続開始、再生手続開始の申立て」のことである。

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第19条【解約の申入れ】

前条の規定にかかわらず、甲及び乙は、その相手方に対し、少なくとも三月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。

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本条は、民法第651 条の規定を踏まえ、契約当事者双方の任意解除権を規定したものである。解約の申入れの時期については、契約終了に伴う管理事務の引継等を合理的に行うのに通常必要な期間を考慮して設定している。

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第20条【本契約の有効期間】

本契約の有効期間は、◯◯年◯月◯日から◯◯年◯月◯日までとする。

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契約の有効期間は、管理組合の会計期間、総会開催時期、重要事項説明時期等を勘案して設定することが必要である。 マンション標準管理委託契約TOPに戻る

第21条【契約の更新】

甲又は乙は、本契約を更新しようとする場合、本契約の有効期間が満了する日の三月前までに、その相手方に対し、書面をもって、その旨を申し出るものとする。
  1. 本契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議がととのう見込みがないときは、甲及び乙は、本契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。
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  1. 第1項は、管理委託契約を更新しようとする場合の申入れ期限及び方法を規定したものである。マンション管理業者は、適正化法第72 条により、管理委託契約を更新しようとするときは、あらかじめ重要事項説明を行うと定められていることを踏まえ、三月前までに更新の申入れを行うこととしたものである。
  2. 契約の有効期間が満了する日までに更新に係る協議がととのわない場合、既存の契約は終了し、当該マンションの管理運営に支障を及ぼすため、第2項では暫定契約の手続きを定めている。ただし、この場合にも適正化法第72条に規定する、同一の条件で契約を更新しようとする場合の重要事項説明等の手続は必要である。
  3. 暫定契約の期間は、協議状況を踏まえて当事者間で適切な期間を設けるものとする。
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第22条【法令改正に伴う契約の変更】

甲及び乙は、本契約締結後の法令改正に伴い管理事務又は委託業務費を変更する必要が生じたときは、協議の上、本契約を変更することができる。
ただし、消費税法等の税制の制定又は改廃により、税率等の改定があった場合には、委託業務費のうちの消費税額等は、その改定に基づく額に変更する。

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本条は、設備の維持管理に関する法令等の制定又は改廃により、第3条の管理事務の内容や第6条の委託業務費の額の変更が必要となった場合について定めたものである。 マンション標準管理委託契約TOPに戻る

第23条【誠実義務等】

甲及び乙は、本契約に基づく義務の履行について、信義を旨とし、誠実に行わなければならない。
  1. 本契約に定めのない事項又は本契約について疑義を生じた事項については、甲及び乙は、誠意をもって協議するものとする。
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第24条【合意管轄裁判所】

本契約に起因する紛争に関し、訴訟を提起する必要が生じたときは、本マンションの所在地を管轄する◯◯地方(簡易)裁判所を第一審管轄裁判所とするものとする。

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支払督促を申し立てる裁判所については、本条の規定にかかわらず、民事訴訟法の定めるところにより、債務者の住所地等を管轄する簡易裁判所においてするものとする。 マンション標準管理委託契約TOPに戻る マンション標準管理委託契約4へ→

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