管理組合の未収金


管理費等の時効は5年?10年?

管理費請求権の消滅時効は5年(定期給付債権)か、10年(一般的な債権)であるか、問題がありました。しかし、平成16年4月23日、最高裁で「管理費は定期給付債権(民法169条)に当たり消滅時効は5年」との判決が出され、管理費の消滅時効は5年であることが確定しました。
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遅延損害金について

標準管理規約では、遅延損害金を請求できるという規定がおかれています(60条2項)。ここでは利率について「○%」としており、具体的な数値が記載されていませんが、一般的には14.6%と定めているケースが多いようです。

遅延損害金の利率は、管理規約に特に定めがなければ、民法上の法定利率の年5%を請求することができますが、管理規約で多少高めの設定にしておくことも滞納防止の措置のひとつとなるでしょうが、上限はあるでしょうか。

金銭消費貸借における利息の上限を制限する法律として、利息制限法と出資法があります。利息制限法によると、14.6%を超える利息を課した場合、超過部分について、無効である(罰則規定無し)と規定されており、一方出資法では20%を上限とし、これに違反した場合、罰則規定が設けられています。
管理組合の遅延損害金は、算出方法を管理費等の○○%としているため遅滞利息であると誤解されている方も多いようですが、債務の履行が遅れたために生じた損害の「賠償金」であって、利息ではありません。そのため、出資法や利息制限法による制約を受けることはありません。

標準管理規約でもコメントで「利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金 利率よりも高く設定することも考えられる。」と記載があります。(第60条コメント④

遅延損害金の計算方法
遅延損害金利息が14.6%の場合
14.6% ÷ 365日 = 0.04% これが1日の利息
2019年8月分からの未収金10万円を2020年7月20日現在請求する場合(当月分を当月末までの支払い)、2019年8月分は9月1日~翌7月20日までの323日分で1,292円、2019年9月分は10月1日から翌7月20日までの293日分で1,172円・・・という風に計上していきます。この場合の合計は7,544円になります。

参考:Yahoo!不動産  合人社計画研究所 法律トラブル相談集

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内容証明郵便について

内容証明郵便とは
総務省(郵便局)がいつ、誰が誰にどんな文書を送ったか?を証明してくれるものです。

内容証明郵便の料金
① 通常郵便物の料金 80円(定形25グラムまで)  
② 内容証明料     420円(手紙文1枚の場合 ※1枚追加250円)  
③ 書留料        420円  
④ 配達証明料     300円(任意)(差出後の依頼は420円)  
①~④までの合計 1,220円
書留(受け取った人が受け取る際に印鑑を押す)なのに、何で配達証明が必要かというと、書留だけでは差出人側には「いつ受け取ったか」証拠が残らないからです。
参考「はじめての内容証明」
http://www7.plala.or.jp/daikou/naiyou/haitatsu.htm

書き方
1行20字以内 26行以内。
相手用・自分用・郵便局用に同じものを3通作って持って行きます。

効果
相手に心理的なプレッシャーを与えます。
内容証明郵便は、民法上、裁判による請求と区別され、「催告」といわれます。
催告では、時効の中断はできません。しかし、催告から6ヶ月以内に裁判上の請求がなされれば、催告のときに遡って時効が中断します。
(2009.5)
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支払督促について

支払督促は、通常の訴訟手続によらないで、確定判決と同様の効果を持つ「債務名義」を取得し、債権回収を目的に行うものです。

債権の目的が「金銭その他の代替物又は有価証券の一定量の給付」の場合に利用が可能で、簡易裁判所書記官が債権者の申立てに理由があると認めれば、債務者の言い分を調べることなしに債務の支払いを命ずる制度(民事訴訟法382条)で、支払督促は債務者に支払を督促する簡易裁判所書記官の裁判のことを云います。

ただし、債務者から異議の申立てがあった場合(この異議のことを督促異議といいます)は、通常の訴訟に移行します(訴訟と同様に、規約の記載に基づき組合決議を要します)。
手続きの流れ
支払督促の手続き
※1 異議があれば、受領後2週間以内に異議申立書提出
※2 申立期間は、支払督促に対する相手の異議申立期間が過ぎてから30日以内

支払督促は、法的手続きの中でも、管理組合が簡単、かつ、少ない費用で時間をかけずに行える方法です。

しかし民事訴訟法上、支払督促は「合意管轄の定め」が適用されず、未収者の所在地への申立が必要となり、未収者が遠方に住んでいる場合は通常の民事訴訟か、少額訴訟を申立てることになります。
(督促異議の申立により訴訟へ移行する場合は、裁判所に対して移送の申立をし、管理規約に規定された裁判所が管轄裁判所となります。)


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少額訴訟制度について

民事訴訟法では、特に少額で、しかも複雑困難なものでないものについては、少ない経済的負担で、迅速かつ効果的に紛争を解決することを目的として「少額訴訟制度」(民事訴訟法368条~381条)があります。少額訴訟制度の特徴は、次のとおりです。
訴訟の目的の価額
訴額が60万円以下の金銭支払請求事件に限り利用することができる。
管轄裁判所
原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出する。ただし、管理規約に合意管轄の定めがある場合にはそれによる。
一期日審理の原則
原則として1回の期日で審理を終了し、口頭弁論終結後、直ちに判決が言い渡される。このため、訴訟代理人が選定されている場合でも裁判所は当事者本人(又は法定代理人)の出頭を命じることができる。
同一年内の利用回数の制限
同一の原告が同一簡易裁判所における同一年内の少額訴訟手続の利用回数は、10回以内に制限される。
審理の進め方
訴えの提起に当たり、原告が少額訴訟による審理及び裁判を希望し、また、被告(相手方)もそれに異議を申し出ないときに審理が進められる。
通常の訴訟手続へ移行
被告(相手方)は、審理開始までは、通常の訴訟手続に移行させる旨のし申述をすることができ、この申述があった時に、通常の訴訟手続に移行することとなる。
申立手数料
申立手数料は、訴額の約1%と低額である。このほかに郵便切手代が必要となる。
相手方の適法な異議の申立のあった場合
少額訴訟の終局判決に対して相手方から適法な異議の申立があると、少額訴訟の判決をした同一の簡易裁判所において、通常の訴訟手続によって審理される。
請求認容の判決の内容
裁判所は、原告の請求を認容する判決において、被告の資力その他の事情を考慮して、支払猶予、分割払、訴え提起後の遅延損害金の支払義務の免除等を命ずることができる。

ホームページ管理人私見
少額訴訟では1回で結審するというメリットがありますが、管理費等の請求訴訟においては通常の訴訟であっても大半が1回で結審され、あまり変わりはありません。
むしろ、少額訴訟の方が事前の準備が通常の訴訟に比べ厄介であったり、職権で分割払いにされたり、遅延損害金を免除されたりする可能性がある点で、デメリットがあると言えるでしょう。
遅延損害金を積極的に請求したいという場合であれば、少額訴訟を選ぶべきではありません。
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理事長が法的手続きを行うために必要な決議

理事長が法的手続きを行うために必要な決議は、管理規約の定めにより次のように変わります。

理事長が法的手続きを追行することについて規約の定めが無い
総会決議が必要となります。
裁判所に提出する「理事長の資格証明書」として、総会議事録の添付が必要となります。

理事長が理事会の決議に基づいて法的措置を追行することができると規定されている場合
「理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。」(標準管理規約(単棟型)第60条第3項)と定められている場合は、理事会決議が必要となります。総会決議の必要はありません。
裁判所に提出する「理事長の資格証明書」として、理事会議事録の添付が必要となります。

理事長が法的措置を追行することができると規約上規定されている場合
「理事長は、管理者として、その職務に関し、区分所有者のために原告又は被告となることができる。」と定められている場合は、特に証明を要する決議はありません。

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