専有・共用・専用使用部分

マンションの共用部分・専有部分
目次

専有部分とは

専有部分とは、区分所有権の目的たる建物の部分ですが、専有部分が専有部分であるためには、その部分が、構造上も利用上も独立している必要があります。

「構造上の独立性」とは、仕切り壁、天井、床、扉等によって他の専有部分と構造上区画されていることであり、ふすまや障子などで部屋の間が仕切られている場合は、外部から自由に出入りできるので、構造上の独立性はありません。

「利用上の独立性」とは、独立した出入り口を有し、直接あるいは共用部分を利用することによって外部に通じることをいい、出入りのために他の専有部分を通らなければならない建物の部分には、利用上の独立性はありません。

部屋の中は専有部分

共用部分とは

共用部分とは、
①専有部分以外の建物の部分
②専有部分に属しない建物の附属物
③専有部分とすることができる建物の部分及び附属の建物で規約により共用部分と定められた部分、をいい、
①及び②の共用部分を「法定共用部分」といい、③の共用部分を「規約共用部分」といいます。

法定共用部分とは、「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」をいい(区分所有法4条1項)、専有部分以外の建物の基本部分とされる支柱、基礎、天井・床スラブ、屋根、外壁、エレベーター室、玄関ホール、配電室や、専有部分に属しない建物の附属物であるエレベーター設備、電気設備、消防用設備等がこれに当たります。

規約共用部分とは、本来構造上は専有部分とすることができる建物の部分及び附属の建物を規約によって共用部分と定めたものをいい、管理員室、集会室、ゲストルーム、建物内駐車場・倉庫や附属の建物である倉庫等がこれにあたります。

なお、規約共用部分は、その旨を登記しなければ第三者に対抗することができません(法4条2項後段)。
ただし、登記しなければ共用部分にならないという意味ではありません。

参考 標準管理規約 別表第2

専用使用部分とは

共用部分でありながら、特定の区分所有者だけが使うことができて、その他の者は使うことができない部分を専用使用部分といいます。また、専用部分を使用する権利を専用使用権といいます。

専用使用部分は法律等で定められているわけではなく、個々のマンションによっても異なりますが、その例としては駐車場・駐輪場・専用庭・バルコニー・トランクルーム・玄関扉・ポーチ等があげられます。

「専用使用部分」「専用使用権」という用語は区分所有法で使われていない用語であり、標準管理規約ではそれらの用語について第2条で定義しています。

第2条 この規約において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
(途中の号は略)
八 専用使用権 敷地及び共用部分等の一部について、特定の区分所有者が排他的に使用できる権利をいう。
九 専用使用部分 専用使用権の対象となっている敷地及び共用部分等の部分をいう。

通常、共用部分の管理は管理組合で行いますが、専用使用部分の管理について通常の使用に伴うものは専用使用権を有する者が行わなければなりません。(バルコニーを清掃する、など)

標準管理規約第21条1項
「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の用法に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。」

バルコニーは専用使用部分

規約共用部分とは

規約共用部分とは、本来、専有部分となるものや物置などの附属建物を、規約によって、特別に共用部分にしたものをいいます。たとえば、マンションの一室を管理人室や住民の集会室にする場合などです。

規約共用部分の登記
規約共用部分の権利関係は、区分所有者全員の共有です。
共有とは所有権を共同で有することですから、本来なら登記記録の権利部の甲区に記録されるはずです。

しかし、これでは非常に見にくい登記になります。仮に区分所有者が100人いるマンションであれば、甲区に100人全員の氏名・住所、各持分を記録することになります。どう考えても、ごちゃごちゃしてわかりにくい登記になります。

そこで、規約共用部分である旨の登記は、甲区には記録せず、表題部に記録されることになっています(登記法44条1項6号)

甲区は無し・敷地権持分は0

専有部分と共用部分は分離できないので、規約共用部分の共有者イコール専有部分の所有者です。そして、専有部分の所有者は、同じ登記記録の各専有部分ごとの甲区を見ればわかります。なにも甲区に共有者全員の氏名を記録しなくても、共有者の氏名がわかる仕組みになっているのです。

専有部分の範囲(壁芯基準・上塗り基準・内法基準)

専有部分の範囲については ①壁芯基準 ②上塗り基準 ③内法基準の3つがあります。

①壁芯基準  境界壁の中心までが専有部分
②上塗り基準 境界の上塗りまでが専有部分
③内法基準  境界(上塗り)の内側空間が専有部分

の上塗り基準によれば、躯体部分は共用部分だが上塗り部分は専有部分になりますので、専有部分の所有者は躯体は自由に改造できませんが、内装工事は自由に行えます。
通説的見解(東京地裁判例平成27.3.17)、標準管理規約はこの説に立っています。

<専有部分の範囲と損害保険>
上塗り基準になっていることを確認したいです。もし壁芯基準に基づいて契約をすると、建物の躯体は専有部となり、管理組合の保険の対象外となってしまいます。標準管理規約と同様の定めがあれば上塗り基準と判断できます。

(専有部分の範囲)
第7条 第2項
専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。

床面積の計算について、区分所有法では「壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による」という内法基準(内側説)が原則とされています(14条3項)。ただし、規約により、この原則とは異なる床面面積が計算方法を採用することもできます(14条4項)。
実際の販売面積(パンフレット上の面積)や共有持ち分の割り振りについては、マンション分譲が建物完成前に行われ、分譲時点ではまだ工事途中であって、壁その他の区画の内側の線が確定できないため、多くの場合、壁芯基準で算出した床面積が利用されています。

尚、登記簿謄本に記載されている専有部分の床面積は、内法面積です。
マンションの部屋の壁の内側から内側の間で計測した面積が登記簿謄本に記載されています。

専有部分の範囲について通説は上塗り基準

共用部分の持分

共用部分に対する区分所有者の持分は、規約で別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分の床面積割合によります(区分所有法第14条1項)。

一部共用部分(附属の建物であるものを除く)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、各区分所有者の床面積に算入します(同条2項、4項)。

共用部分の変更

共用部分の変更は、「形状又は効用の著しい変更を伴うもの」は特別決議を要しますが、それ以外の場合は普通決議で変更が可能です。

区分所有法第17条
共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2項 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

標準管理規約第47条(総会の会議及び議事)
総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
2項 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
3項 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
一 規約の制定、変更又は廃止
二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)

標準管理規約コメントから具体的な事例が示されています。

バリアフリー工事
普通決議
建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずにスロープを併設し、手すりを追加する工事。
特別決議
階段室の改造、または外付けで新たにエレベーターを新設する工事。

耐震改修工事
普通決議
柱や梁に炭素繊維シートや鉄板を巻きつけて補修する工事や構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さい工事。
特別決議
基本的構造部分への加工を要する工事。

防犯化工事
普通決議
オートロック設備設置の際、配線を空き管路内に通したり、建物の外周に敷設するなど共用部分の加工の程度が小さい工事。防犯カメラ、防犯灯設置工事。

IT化工事
普通決議
光ファイバー・ケーブルの敷設工事の際、既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えない場合。
新たに光ファイバー・ケーブルを通すため、外壁・耐震壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元する場合。

計画修繕工事
普通決議
鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事。

その他
普通決議
窓枠、窓硝子、玄関扉等の一斉交換工事。
すでに不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事。
特別決議
集会室、駐車場の増改築工事などで大規模なものや著しい加工を伴うもの。

階段にスロープを併設する場合は普通決議
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