「マンション建替え円滑化等に関する法律」誕生
マンション建替え円滑化法の目的
建替えについては区分所有法に規定があります。しかし、区分所有法の定めは建替えの決議方法と決議事項が規定されており、決議がなされた後の事業段階に関する法律はありませんでした。
そこで、建替え決議が成立した後の建替え事業について、2002年(平成14年)6月「マンション建替え円滑化等に関する法律」が制定されました。
円滑化法は、法人格を有するマンション建替組合の設立等による事業主体の法的位置づけの強化、権利変換手続きによる関係権利の再建マンションへの移行等、マンション建替えの円滑化に係る様々な措置を講ずるものです。
また、補助金、融資、税制等の支援制度も整備されており、これらを活用することにより、マンション建替えをより円滑に進めることが期待されました。

マンション建替え円滑化法の適用対象
建替え円滑化法の適用対象は、「マンション」に限られます。法2条:定義の第1項で、”マンション☞ 二以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるものをいう”、と定められております。マンション管理適正化法と同様の概念です。
区分所有法は、居住部分がまったく存在しない場合でも適用されるので、区分所有建物の建替えすべてに、この法律が適用されるわけではありません。
また第2項では”マンションの建替え☞現に存する一又は二以上のマンションを除却するとともに、当該マンションの敷地(これに隣接する土地を含む。)にマンションを新たに建築することをいう。”とされており、建替えには次の3つがすべて含まれます。
- 建替え法に基づくマンション建替え事業
- マンション建替え事業ではないが、区分所有法に基づく建替え決議に基づく建替え
- 区分所有者の関係権利者全員同意での任意の建替え
既存敷地に新しいマンションを建設するものに限定されており、離れた場所に新しいマンションを建設する場合は対象外となります。
「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に改名
マンション建替え円滑化法ができたものの、南海トラフ地震や首都直下型地震等の巨大地震発生が恐れられている中、1981年(昭和56年)以前の旧耐震基準で建設された耐震性不足のマンション老朽化に対する建て替えが喫緊の課題となり、2014年(平成26年)、より建替えの円滑化を図るため、以下の制度が創設・追加されました。
- 耐震性が不足していると認定されたマンション(要除却認定マンション)について、区分所有者等の4/5以上の賛成で、マンションおよびその敷地を売却すること
- 法人格を持つ組合を設立してマンション敷地を売却する事業を実施する制度を創設すること(マンション敷地売却組合・マンション敷地売却事業)
「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」は「等」の位置を変え、正式名称が「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」から、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」と改められました。
さらに、2020(令和2)年には、マンションの老朽化を抑制し、周辺への危害等を防止するための維持管理の適正化や老朽化によって維持修繕等が困難なマンションの再生に向けた取り組みの強化のため、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の一部を改正する法律」が成立・公布され、以下の改正が行なわれました。
- 除却の必要性に係る認定対象に、以下の項目が追加されました。
(1)外壁の剥落等により危害を生ずる恐れがあるマンション等
(2)バリアフリー性能が確保されていないマンション等
また、容積率の特例が認められるとともに、(1)については、区分所有者および議決権の4/5以上の同意によりマンション敷地売却を可能としました。
- 敷地分割が必要となる団地型マンションの敷地分割事業を円滑に推進するため、法人格を持つ組合を設立して実施する制度が創設されました。(敷地分割組合・敷地分割事業)

「マンションの再生等の円滑化に関する法律」に改名
2025(令和7)年には、「建物と居住者の『2つの老い』の進行に対して、新築から再生までのライフサイクル全体を見通して、管理・再生の円滑化等を図ること」を目的として、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律の一部を改正する法律」が制定・公布され、法律の題名も同年11月の施行に合わせて「マンションの再生等の円滑化に関する法律」に改められた。
悩める組合員最初の「の」は必要かのう。
マンション建替え事業とは
マンション建替え事業とは
マンション建替え事業とは、円滑化法で定めるところに従って行われるマンションの建替えに関する事業、およびこれに付帯する事業をいいます。すなわち、都道府県知事等の認可を得て、施工マンション(現在のマンション)を除去し、施工再建マンション(新しいマンション)を建築する事業をいいます。
所定の手続きを経てマンション建替え組合を設立した場合は、法人格を取得でき、組合が主体となって金融機関等と契約を締結することができます。組合の運営及び意思決定のルールも法律上で定められているため合意形成がスムーズとなり、また法人税法等の税務上の特別措置を受けることができます。
さらに、権利変換手続きにおいて、区分所有権、借家権、担保権等は連続することになり、新マンションにスムーズに移行することが可能となります。
こういった手法を利用して行う建替えをマンション建替え事業と言います。
マンション建替事業の施行者
マンションの建替えを行う場合は、マンション建替事業の施行者を設定しなければなりません。施行者とすることができる主体は次のふたつです(第5条)。
- マンション建替組合
- マンションの区分所有者またはその同意を得た者(個人施行者)
①の場合
都道府県知事等の認可を含む法定の手続きを経て設立できます。設立された組合は法人となります(6条1項)。
②の場合
1人または数人で共同して事業を施行しようとする場合に選択されます。区分所有者の全員の同意が必要です(5条2項)。
なお、本法に基づくマンション建替え事業者でなくても、区分所有法の建替え決議に基づき、あるいは、組合員や関係権利者の全員で行うマンション建替えをすることは禁止していません。この場合には、マンション建替え組合も個人施行者も登場しません。
マンション建替え組合とは
マンション建替え事業を施工するためだけの、法人格を有する組合で、建替え事業終了後には清算・解散することが予定されています。都道府県知事等の認可が必要であり、認可を受けることによって成立します。



「マンション建替え組合」は、区分所有法62条の建替え決議(所有者&議決権各4/5以上の賛成)をクリアした後に、認可を受けて成立するのね!
設立するためには、マンションの建替えを行う旨の合意をしたものとみなされた者が、5人以上共同して、定款および事業計画を作成しなければなりません(9条1項)。
区分所有法第64条により「建替えを行う旨の合意をしたものとみなされる者」は以下の通りです。
- 建替え決議に賛成した区分所有者
- 区分所有法第63条第1項の催告に対し、建替えに参加する旨を回答した各区分所有者
- 区分所有者または敷地利用権を買い受けた各買受指定者
組合には「マンション建替組合」という文字を用いなければなりません。また、建替え組合でないものは「マンション建替組合」という文字を用いてはなりません。
マンション再生円滑化法に基づく事業実施の手続き
マンション再生円滑化法に基づく、組合施行によるマンション建替事業等の流れは次のフロー図のとおりです。
これから順を追って見ていきましょう。
尚、定款・資金計画作成前の、不参加者への売渡請求までの流れについては「マンションの建替え・再生」をご参照ください。


定款及び事業計画の作成
再生組合を設立するためには、再生合意者が、5人以上共同して、定款及び事業計画を作成しなければなりません(再法9①)。
実際には、定款、事業計画の作成から組合設立の手続きまでを再生合意者のみで行うことは困難であり、専門家であるコンサルタント等の協力を得て行うことが望ましいです。
定款の作成
定款には以下の事項を記載しなければなりません(再法7)。


事業計画の作成
事業計画には以下の事項を記載しなければならず、その内容は、建替え決議等の内容に適合したものでなければなりません(再法10①・②)。





再省?再び反省?



マンションの再生等の円滑化に関する法律施行規則という省令のことです。
マンション再生組合設立の決議
再生組合の設立は、再生合意者の過半数であって、議決権(区分所有法 38 条の議決権)の過半数を有する者が出席する集会において、出席した再生合意者及びその議決権の各4分の3以上の多数で決議をしなければなりません(再法9②)。



特別決議ということじゃな。
マンション再生組合設立の認可申請
再生合意者は、マンション再生組合設立の決議を得た後、都道府県知事都道府県知事等に対して(再生前マンションの所在地が町村の区域内にあるときは、当該町村の長を経由して)再生組合設立の認可申請を行います(再法9①・⑥)。
都道府県知事等は、以下の認可の基準に基づいて申請書類を審査します。


また、特定行政庁と協議し(再法 12②)、事業計画を2週間公衆の縦覧に供し(再法11①、12)、意見を募ったうえで、認可の基準に申請内容が該当する場合は、再生組合の設立を認可します(再法12)。
そして、再生組合の名称・再生前マンションの名称及びその敷地の区域・再生後マンションの敷地の区域などを公告します(再法14①、再省16)。
組合員名簿の作成
再生組合は、再生組合設立認可の公告の後、遅滞なく、以下の事項を記載した組合員名簿を作成し(再法18①、再省18)、再生組合の事務所に備え付け、閲覧に供さなければなりません(再法95①)。
再生組合設立総会の招集
再生組合設立の認可を受けた者は、認可の公告のあった日から起算して 30 日以内に、「最初の理事及び監事を選挙し、又は選任するための総会」を招集しなければなりません。
この総会は一般に「マンション再生組合設立総会」( 以下「設立総会」という。)と呼ばれています(再法28⑦)。
なお、再生組合設立の公告のあった日から 30 日を経過してもなお設立総会を招集しないときは、再生組合設立の認可を受けた者に対する罰則規定がある(再法 230)ほか、都道府県知事等は、権利変換期日前に限り再生組合設立の認可を取り消すことができることになっています(再法98④)。



急がんといかんな!
設立総会では、そのほか以下の事項についても議決する必要があります。
再生組合は、理事長が選任を、都道府県知事等に届けなければならず、その届出を受けた都道府県知事等は、遅滞なく理事長の氏名及び住所を公告しなければなりません。再生組合は、この公告があるまでは理事長の代表権をもって組合員以外の第三者に対抗できません(再法25①~③)。




