マンションの給排水設備2


受水槽の構造基準・設置基準など

水道」とは、水道法において、「導管及びその他の工作物により、水を人の引用に適する水として供給する施設の総体をいう。」(水道法第3条第1項)とされており、「給水装置」については「需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結した給水用具をいう。」(法3条第9項)とされています。
マンションに受水槽がある場合、配水管から受水槽の注入口までが「給水装置」であり、受水槽以下はこれにあたらない、とされています。

しかし、設計・施行に関しては、建築基準法が適用されます。
飲料用水槽は、建築基準法施行令第129条の2の5の中で、「給水タンクは、ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造とし、金属製のものにあっては、衛生上支障がないように有効なさび止めのための措置を講ずること」とされ、具体的な基準については、昭和50年建設省告示第1597号(最終改正平成12年建設省告示第1406号)で、詳細な構造と設計について規定されました。
そのほか、法令により定められている事項には次のようなものがあります。

<構造要件>
  • 有効内径60cm以上のマンホールを儲け、マンホール面は10㎝以上立ち上げ、マンホールのふたは防水密閉型とする。
  • マンホール付近に槽内外に耐食性のはしごを設ける。
  • 先端に防虫網をつけたオーバーフロー管及び通気口を設ける。
  • 貯水槽の蓋は、水が入らないように、1/100以上のこう配を設ける。
  • 貯水槽の底部は、1/100以上のこう配を設け、最低部にピット又は溝を設け、そこへ水抜き管を設置する。

<設置要件>
  • 六面点検が容易にできること。(①周壁、底60cm、天井100㎝以上のスペースを確保する ②塔屋の水槽には階段で上がれ、必要により柵を設ける。)
  • 建築物の他の部分と兼用しないこと。
  • 槽内に飲料用配管以外の配管を設けないこと。
など
貯水槽の基準
※材質であるFRPについては、用語集(あ~お)をご参照ください。

参考☞厚生労働省資料>給水装置及び給水用具
参考☞北海道千歳市資料>貯水槽(受水槽)編※2022年現在ページ無し ※他自治体にも同様資料有り
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貯水槽清掃の義務

水道水は受水槽に入った段階で水道局による管理の手から離れ、その先は貯水槽設置者が水の管理をしなくてはなりません。
管理者は、衛生的な水を供給できるよう、貯水槽の定期的な清掃を行うこととなりますが、これは法律で義務付けられているのでしょうか。

簡易専用水道(貯水槽の有効容量が10tを超える)の場合は、水道法第34条2により年1回の清掃が義務付けられています。
罰則について→清掃が行われているかのチェックも含めた検査を行わなかった場合100万円以下の罰金
有効容量10t未満の貯水槽は、以前は特に義務が無かったのですが、「水道法の一部を改正する法律」(平成 14 年 4 月 1 日施行)により水道法が改正され、各市町村の管理基準に従い、簡易専用水道と同様に管理する義務が定められました。

<該当条文>
水道法 第2節 業務
14条(供給規定)
水道事業者は、料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件について供給規定を定めなければならない。
2 前項の供給規定は次の各号に掲げる要件に適合するものでなければならない。
  1. 1~4 省略
  2. 5貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であって、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水道水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水槽の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。
3~7 省略
※14条の2の5の「貯水槽水道」が、小規模受水槽に該当

参考☞本松工業株式会社HP「水道法について」

こちらは改正後の管理に関する、厚生労働省が記載しているイメージ図です。図をクリックすると、厚生労働省ページにリンクします。

厚生労働省へリンク
その他参考☞群馬県館林市規制例「貯水槽の衛生管理について」
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簡易専用水道検査とは

水道法34条の2第2項に規定する検査で、その水道の使用者が安心して利用できる水を供給するために、簡易専用水道設置者に義務付けた年1回の検査です。

簡易専用水道とは
受水槽が有効容量が10立方メートル(10t)を超えるものをいいます。
有効容量とは水槽の最高水位と最低水位の間の容量になります(下図参照)。
また受水槽が2つ以上有り、同じ高置水槽に運ばれるのであれば、それぞれの有効容量を足したものが基準となります。

有効容量とは
点検者
厚生労働大臣登録検査機関に依頼しなくてはなりません。

点検の内容
以下の項目について点検します。
1. 水槽の清掃状況の確認
 年1回定期的に受水槽・高置水槽の清掃が行われているか。
2.施設の外観点検
 水槽に亀裂やマンホールの蓋に破損は無いか、有害物や汚水等が混入する恐れ
 はないか、など確認する。
3.水質検査
 一般細菌、大腸菌、有機物など、水質検査機関に依頼して水道法水質基準に適
 合しているか確認する。
4.飲料水の外観検査
 蛇口から出る水の色、にごり、臭い、味などに注意する。
5.残留塩素の測定
 専用の測定器で、蛇口から出る水の残留塩素濃度を測定する。
6.書類検査
 簡易専用水道設備の配置や系統図面、清掃の記録、その他管理についての記録
 整備保存状況のチェック。(5年間)

※基準となる実施頻度・根拠~東京都の場合~
 1→年1回(水道法施行規則) 2→月1回(東京都の指導)
 3→年1回(東京都の指導)   4→毎日(東京都の指導)
 5→週1回(東京都の指導)   6→(東京都の指導)
 問い合わせ先:東京都福祉保健局

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適切な貯水量は?

貯水槽の清掃など、適正な管理をしていても、貯水槽の有効容量が適正な容量よりも大きい場合は、長時間水道水が滞留するために残留塩素が低下してしまうことがあります。
貯水槽の適正な容量は、一日あたりの使用水量の1/2程度といわれています。

【適正な貯水槽容量を求める計算式】
0.2(㎥/日・人)×居住人数(人)=1日あたりの使用水量(㎥/日)の目安
1日当たりの使用水量(㎥/日)÷2=適正な貯水槽容量(㎥)


貯水槽の容量が大きすぎて残留塩素が低下してしまう場合は、ボールタップの位置を下げるなどの対策をとっていただき、受水槽の有効容量を小さくすることをお勧めします。
※1㎥=1000ℓ
貯水槽点検 知ってQより
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