悩める組合員わしらのマンション老朽化がひどいんじゃ。建て替えを考えないとならんが、ハードルが高そうじゃなあ、実現できるんじゃろうか。
マンションの建替え・再生のマニュアルについて
今後、老朽化マンションの急増が見込まれ、その再生が重要な課題となっています。
2026年(令和8年)には、再生の円滑化を促進するため区分所有法、マンション建替え円滑化法などマンション関係法が改正され、従来の改修や建替えが円滑化されたほか、建物更新・建物敷地売却・建物の取り壊し等の新たな手法について制度が整備されました。
また、国土交通省により、これら手法についてのマニュアルが公表されました。
このマニュアルをわかりやすく解説していきます。


以下資料はこちらのページから取得可能です
- マンション再生等手法の比較検討マニュアル
- マンション再生実務マニュアル
- マンション等売却実務マニュアル
- マンション除却事由の解説
- マンション改修マニュアル
- 団地型マンション再生等マニュアル
- 被災マンション再生等のための制度解説
- マンション再生事業等に関する認可等マニュアル
- 要除却等認定実務マニュアル
- マンション再生等に係る事例集
これまでの建替えでは、デベロッパーが余剰容積を活用することで、有利な条件で区分所有者の合意形成を得ることも可能であったが、今後再生が必要となる多くのマンションにおいてはこのような事業手法をとることが難しくなることが予想されます。その場合には、デベロッパーなどに頼らず、各区分所有者が自らの費用を負担し、事業の主体となって建て替え計画を作成し、進めることが必要になります。



自分たちでどうにかせにゃならんのか。
マニュアルを読んでいくしかないのう。
マンション再生実務マニュアルを読んでいこう
マンション再生実務マニュアルでは、区分所有法に基づく建替え決議等1を得て、マンション再生円滑化法に基づきマンション建替事業又はマンション更新事業(以下、「マンション建替事業等」という)を進める場合の手続きについて解説されています。
- 建替え決議(区分法62①)・建物更新決議(区分法64-5①):区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数決議(一定の客観的事由がある場合は各4分の3以上) ↩︎



建替え決議に至るまでの検討だけでも大変そうじゃのう~
まずは用語から確認しておかんと。とほほ。
用語の定義


区分所有法とマンション再生円滑化法
区分所有法は、私法分野である民法の特別法です。もし区分所有法が無ければ、建替え等の処分行為は、一般法の民法に基づき、区分所有者全員の賛成が必要となってしまいます。
一方、マンション再生円滑化法(マンションの再生等の円滑化に関する法律)は、建替え決議等がなされた後、スムーズに実施できるよう定められた行政法で、建替え等決議後の、建築事業等の要件や手続きについて規定しています。



マンション再生円滑化法を利用すると、何がどうスムーズになるのかのう?
- 法人格が与えられ、各種契約行為ができるようになる。
- 建替え参加者の中で、一人でもその後の手続きに協力しない者がいた場合、区分所有法では対応方法が無く実現不可となる恐れがある。
- 区分所有権が一時的に無くなるため、所有者、抵当権者、賃借人の地位が不安定となるが、マンション再生円滑化法では権利変換のルールが定めれているため、そのような不安が無くなる。



なるほど!
マンション再生円滑化法 施行者の種類
マンション再生円滑化法では、マンション再生事業の施行者として、以下の2種類を設けています。


市街地再開発事業による建替え
マンション建替え事業は、区分所有法の建替え事業後、マンション再生円滑化法に基づいて実施されるケースが多くなっていますが、都市再開発法に基づき市街地再開発事業として実施される例もあります。
市街地再開発事業とは簡単に言うと、古くなった街のエリアを一度まとめ、安全でキレイな高層ビルやマンション、快適な道路などに生まれ変わらせるビッグプロジェクトです。「麻布台ヒルズ」や「渋谷サクラステージ」など、大手デベロッパーなどが関わって事業がすすめられます。
マンション再生事業の基本的な流れ
建替え又は更新を行う場合の基本的な流れは以下の通りです。





時間はかかりそうじゃが、全体像は見えてきた。
生きて再入居するために、頑張ってみていくぞい。
建替えまでの合意形成の過程で登場する主体は以下の通りです。
尚、管理会社は依頼を受けない限り、再生等の検討には関与しませんが、再生前のマンションの理事会運営や集会招集のサポートをすることが多いです。


建替えを推進するうえで、売却用の保留床(建替え後のマンションの大規模化などで新たに生まれる、施行者に帰属しない床)などが生じる可能性がある場合は、事業協力者としてデベロッパーの協力を得ることが重要となります。
①準備段階
勉強会の発足など、建替え等について管理組合の中で検討を始めます。
②検討段階
管理組合の総会で、各再生等手法を比較検討する組織を設置します。
検討費用を修繕積立金から拠出する場合、事前に管理規約に規定する修繕積立金の使途に「建物の建替え、建物の更新、建物敷地売却、建物取壊し敷地売却又は取壊し(マンション再生等)に係る合意形成に必要となる事項の調査」が位置付けられ
ているかを確認し、この事項がないときは、管理規約の変更をしておく必要があります。
検討のために外部専門家の協力を要する場合には、業者を選定し管理組合の総会で決議、業務委託契約を締結します。
③計画段階
「建替え推進決議等」後の段階になります。
推進決議は、再生等手法の比較検討をした上で、適切だと判断された内容で「建替え」、「建物」の推進を行うことを決定します。
建替え推進決議等は、法で定められた手続きではなく、成立要件について法的な定めはありません。
管理規約において定めておくことも可能であり、その場合の決議要件については、普通決議(過半数)とすることも特別決議(4分の3以上等)とすることも可能であると考えられますが、管理規約に特段の定めがない場合には、普通決議事項となります。
しかしながら、建替え決議等の成立要件が出席区分所有者及びその議決権の各5分の4以上であることに鑑みた場合、できるだけ多くの賛成を得ることを目指すべきです。なお、地方公共団体では、コンサルタント等の専門家の派遣支援の要件として、
4分の3以上の推進決議を条件としている場合もあります。
④実施段階
「建替え決議等」後の段階になります。
建替え決議等は、区分所有法で定められた手続きであり、「区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上(一定の客観的事由がある場合は各4分の3以上)の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議」です(区法 62①)。
これらは、共有物の処分には共有者全員の同意が必要と定めている民法の例外規定にあたります。
建替え決議等の効果は、建替え等に参加しない区分所有者の権利を強制的に買い取り(売渡し請求)、事業に対して全員同意の状態をつくりだすことで、建替え等の実現を図る点にあります。
このように、個人の財産権に対する強制的な制限を認めることから、管理規約等において成立要件を緩和することは認められていません(強行規定)。
都道府県知事等に対し再生組合の設立認可の申請を行い、デベロッパー等を活用しながらマンション建替え事業を進めていきます。



基本的な流れは以上じゃ。これから推進決議からの流れを深堀していくぞい。
推進決議から建替え決議等まで
管理組合の総会で建替え推進決議等がされたことを受け、必要に応じて建替えの場合は「建替え計画委員会」更新の場合は「更新計画委員会」を立ち上げます。
行政や近隣住民との協議など様々な手続きが必要となるため、専門的な知識や経験を持つ専門家のコンサルタントとしての関与が必要不可欠となります。
また、建替え後に保留床が生まれる可能性がある場合は、保留床の販売力を有する事業協力者(デベロッパー)を選定してその協力を求める必要があります。
- 建替え事業の進め方を計画組織にアドバイスし、区分所有者の合意形成を支援する。
- 建替え計画・事業計画等を作成する。
- 事業協力者(デベロッパー)の選定について支援する。
- 建替えへの未賛成者への対応を支援する。
- 行政との協議等を支援する。
- 法律や税務等、専門領域に関する情報提供を行う。



どこに頼めばいいんじゃ?マンション建替え・改修アドバイザー制度(東京都)があるようじゃ、聞いてみるかのう。
- 契約の履行期限(例:単年度/複数年/建替え決議が成立するまで 等)
- 業務委託料(契約額)と委託料の支払(支払日・支払方法)
- 業務の具体的内容(例)
建替え計画委員会の運営に関する指導・助言/区分所有者の意向把握と合意形成の支援/
建替え計画の策定/事業の実現方策の具体化/資金計画の作成/事業協力者の選定の支援
/関係地方公共団体等との協議 - 履行期間の遅滞を認めるか否か/遅滞を認める場合の遅滞料の支払い
- 受託者(専門家)/委託者(管理組合)、それぞれの責に帰すべき事由により契約の目的が
達成することができなくなった場合の契約解除と違約金の支払い - 契約当事者間に紛争が生じた場合の処理
- 守秘義務の範囲及びその存続期間 等
客観的事由で決議要件が緩和されるかチェック
マンションに一定の客観的事由がある場合は、決議の多数決割合を5分の4以上から4分の3以上に引き下げることができます。





⑤わかりづらいのう。要するに、移動等円滑化経路→国が定めた「高齢者や障害者でもスムーズに移動できるルートの基準」を満たしていない(=バリアフリーになっていないダメな状態である)」という意味じゃ。
最後は適合している基準の例じゃ。
事前の意思把握
区分所有者に以下のよう内容について意向を把握します。


計画案の作成
区分所有者の希望をできるだけ反映させながら、計画等案を作成します。計画の作成は専門家の主たる役割になりますが、内容としては次のようなものになります。


不安事項への対応
資金負担の軽減
各区分所有者にとって最も強い関心事であり、建替え等の合意形成が困難となる最大の要因が、費用負担の問題です。
事業条件が厳しく、費用負担が大きな問題になるような場合、専門家に多様な対策を提案してもらうよう働きかけることが大切になります。費用負担の軽減方策例は以下の通りです。


その他の不安事項


建替え決議に向けて
決議の意義を再確認しよう
建替え決議等は、それが成立することにより、事業に円滑に着手できるようにするために、参加しない区分所有者の区分所有権と敷地利用権を時価で売り渡すよう請求する権利を参加者側に認めています。
すなわち、決議に反対した者は、決議成立後に再度、建替え等に参加するかどうかの意志決定をする機会はありますが、その段階で反対した場合は「建替事業等に参加しない者」として扱われ、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡して転出しなければなりません。
決議の意義について十分に理解し、区分所有者全員に周知徹底を図ることが大切です。
区分所有者を特定しよう
所在が分からない区分所有者がいるときは、裁判所に、所在等不明区分所有者の除外(区法 38-2)又は所有者不明専有部分管理命令(区法 46-2)の申し立てをする等の対応の検討も必要となります。
高齢の区分所有者等については、万が一の場合を考え、危急時の連絡先の確認しておくことも重要です。
規約を確認しておこう
マンションによっては、分譲時に事業者等が用意したものについて、法的に必要な手続きを経ずに用いられている場合があり、このような場合には、規約そのものの有効性が問題となります。法で規定する手続きに準じて有効に承認を得られているかを確認しておきましょう。
また、建替え等の検討をするための費用を修繕積立金から拠出することができる旨が規約で定められているかどうか、理事や理事長の資格が規約の条件を満たしているか否か、議決権についてなど、確認しておきましょう。
理事や理事長の資格について、平成 23 年(2011年)改正前のマンション標準管理規約では、「居住組合員」とされている点に注意が必要です。規約にこの規定が残っている場合、例えば、理事長がマンション外に居住していると、理事資格を満たさないことになってしまいます。
また、議決権についても、例えば、マンション内の専有部分の面積が大きく異なるにも関わらず、住戸1戸につき各1戸の議決権とする規約は、区分所有者の利害の衡平が図られていないものとして区分所有法第 30 条第3項の規定に反する可能性があります。同項に抵触する場合、当該規約の条項は無効となり、当該規約に基づく総会の決議は法的な拘束力を有しないこととなってしまいます。



せっかく決議したと思ったら無効だなんて、無念じゃろうなあ。
関係権利者について確認しておこう
建替え決議等の効果は、基本的には区分所有者以外には及ばないことから、区分所有者以外の関係権利者との調整が必要となります。
抵当権者については、抵当権の権利変換に関する同意(再法 57②)を得る必要があります。
賃借人については、建替え決議等の前に、任意の交渉で賃貸借契約の解約や明渡しの合意をすることが基本となりますが、交渉がまとまらない状態で建替え決議等を行った場合には、区分所有法第 64 条の2に基づき、「賃貸借の終了請求」をすることも可能です。ただし、区分所有法に基づき賃貸借契約が終了したとしても、専有部分の賃借人は、賃貸借の終了により通常生じる損失の補償金の支払いを受けるまでは、建物の明渡しを拒むことができます。
抵当権者や賃借人などの関係権利者の状況について、早期に権利関係を把握しておきましょう。
建替え決議集会を招集しよう
建替え決議集会等を招集するときは、当該集会の開催日の2か月前までに招集通知を発する必要があります(区法 62⑥/62-5③、62⑥)。この期間は区分所有者に建替え等についての十分な検討・判断を行うことができるようにする趣旨なので、規約により伸長することはできますが、短縮することはできません。
建替え決議集会等は、通常の集会と同様に管理者が招集します(区法 34①)。また、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)の5分の1以上であって議決権の5分の1以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができます(区法34③)。
招集通知に記載すること
招集通知には、1)会議の目的たる事項、2)議案の要領、3)その他の通知事項、を記載して送付しなければなりません(区法62⑦、35①)。
1)会議の目的たる事項
招集通知には、会議の目的として「○○マンションの建替え決議に関する件」、「○○マンションの建物更新決議に関する件」等、建替え決議等を行う会議である旨を明確に示します。
2)議案の要領
以下の事項を記載しなくてはなりません。(区法62④/64-5②)


3)その他の通知事項
会議の目的たる事項、議案の要領のほか、次表に掲げる事項を記載し通知しなければなりません(区法62⑦/64-5③、62⑦)。


招集通知に代える掲示の実施
決議集会の招集者は、通知の宛先の届出のない区分所有者に対しては、集会の招集通知に記載される上記の通知事項の内容について、建物内の見やすい場所に書面で掲示する等によって、通知に代えることができます(区法35④)。



占有者(賃借人)は、決議集会の目的たる事項に利害関係を有する場合は、あらかじめ理事長に通知した上で、当該集会に出席して意見を述べることができるよ(区法 44①)、この意見陳述のチャンスを与えるためにも建物内の見やすい場所に書面で掲示等を行う必要があるよ(区法44②)。
説明会の開催
決議集会の招集者は、集会の招集通知に記載される上記の通知事項についての説明会を、決議集会の開催日の1か月前(この期間も、規約により伸長することができるが、短縮することはできません。)までに、開催しなければなりません。
なお、この説明会の開催通知の発出時期については開催日の少なくとも1週間前とされています(区法62⑨、35①/64-5③、62⑨、35①)が、決議を行う前の重要な説明会であることから、決議集会の招集通知に併せて記載するなど、できる限り早くに開催日を通知することが望ましいです。
建替え決議等の成立要件と定める事項
決議の成立要件
建替え決議等は、区分所有者(議決権を有しないものを除く)及び議決権の各5分の4以上の多数により成立します(区法62①/64-5①)。
いずれの決議についても、建物が一定の客観的事由(区法62②各号のいずれか)に該当する場合は、多数決割合が、「5分の4以上」から「4分の3以上」に引き下げられます(区法 62②/64-5③、62②)。
定める事項
① 再建建物/建物の更新がされた後の建物の設計の概要
一棟の建物だけでなく、専有部分となるべき各部分についても定める必要があります。一棟の建物全体の用途、構造材料、階数、建築面積、延べ面積、各階ごとの床面積等を示すとともに、各専有部分の用途、配置、床面積、間取りを示します。
② 建物の取り壊し及び再建建物の建築/建物の更新に要する費用/の概算額
建替え等に要する費用総額の概数です。ただし、この費用は決議の段階ではあくまでも予定額のため、区分所有者の賛否の判断に支障がない限度において、幅のある定め方をすることが許されます。
③ 上記②の費用の分担に関する事項
上記②に定める費用総額を参加者等がどのような割合で分担するかについて定めるもので、費用分担の算定方法等を明示することになります。費用分担の算定は、再建建物については、分担額が再建建物において取得する専有部分の評価に比例し、取壊し費用については、現建物及び敷地について有する権利の価格を考慮して定められることになるのが一般的です。
④ 再建建物/建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項
本来は、再建建物等のどの部分を誰が取得することになるのか、その場合の対価の清算をどのようにするのか等について定めますが、建替え決議等の段階では参加者が確定していないため、その決定の方法又は基準(住戸取得の定め方のルールなど)を定めていれば足りると考えられます。
また、保留床が生じる場合にも、原始的に誰が取得することになるのか、つまり建替え等の参加者全員で共有するのか、特定の参加者又はデベロッパー等の事業者が原始取得するかを定めておけば足りると考えられます。



保留床ってなんじゃったろうか?



「保留床(ほりゅうしょう)」だよ。「建替えで新しく増えた部屋のうち、元の住民(地権者)に配分されずに、余った部屋」のことだよ。
建替え決議の有効性をめぐり裁判となり、判決で建替え決議が無効とされた事例があります。当該マンションは借地権マンションであり、建替えの際に隣接地を一部借り受けて建て替えを行う計画でしたが、決議案の「再建建物の設計の概要」において、建物の敷地となる範囲が明示されていなかったこと、及び「再建建物の建築に要する費用の概算額」
において、地主に支払う承諾料等の記載がなかったこと等から、区分所有法の要件を満たさない重大な瑕疵として、決議が無効と判断されました。(東京地裁 平成19年1月24日判決控訴)
土地の範囲が示されなければ建物の設計ができないことや、地主に支払う承諾料も相当な額になる可能性があるにもかかわらず費用の概算額においてその点が言及されていないことから、区分所有法第62条第4項に反すると判断されたものです。
あとから予想外の変更があると、不参加を決めて出て行った人たちとの間で裁判沙汰などのトラブルになりかねません。
進める中でのやむを得ない微調整は仕方ありませんが、基本となる計画は最初から慎重に固めておきましょう。
建替え決議成立



念願の建替え決議成立じゃ!!
じゃが、まだまだ実行まで気が抜けんのう。
建替え決議等が成立すると、決議に賛成しなかった区分所有者に対する催告及び売渡し請求等の手続き(区法63/64-5③、63)を経て建替え等の参加者が確定し、全員同意の状態のもとで事業を実施することが可能となります。
ただし、建替え決議等の効力は、その建物の区分所有者及び承継人(譲受人や相続人等の区分所有権を取得した者)のみに及び、第三者には及びません。
もっとも、賃借人等に対しては、建替え決議等がされた場合に、金銭補償を前提として賃貸借を終了させることが可能です(区法 64-2)。
決議成立から合意までの手続き
建替え決議等の成立から合意に至るまでの流れは以下の通りです。


※買受指定者(区法63⑤)とは、建替え決議に賛成した各区分所有者又は建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む)の全員の合意により、区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者をいいます。



建物更新決議から更新合意までの手続きも同様だよ。
未賛同者への催告
建替え決議等の成立後、集会の招集者は、遅滞なく、決議に賛成しなかった区分所有者(又はその承継人)に対し、決議の内容により行われる建替え等に参加するか否かを回答すべき旨を書面又は電磁的方法で催告しなければなりません(区法 63①/64-5③、63①)。
催告は民法の原則に従って、相手方に到着して初めて効力が生じる(民法97①)ので、到達日を確定するために配達証明付きの内容証明郵便で行うことが望ましいです。
催告を受けた者は、その日から2か月以内に、集会の招集者に対して回答しなければなりません(区法 63③/64-5③、63③)。決議に反対したものの、催告が到達してから2か月以内に建替え等に参加する旨の回答をした区分所有者は、決議に賛成した区分所有者とともに建替え参加者又は更新参加者となります。
期間内に回答しなかった者は、建替え等に参加しない旨を回答したものとみなされます(区法63④/64-5③、63④)ので注意が必要です。



最初は反対していたけど、2か月考えて賛成することにしたわ!
売渡請求の実施
催告の結果、建替え等の参加者と不参加者が確定します。これを受けて、建替え等に参加する区分所有者又は買受指定者は、不参加者に対して、その区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができます(区法63⑤)。
売渡し請求をすることができる期間は、催告が到達した日から2か月目(催告に対する回答の期間)の日の翌日から起算して2か月以内です。
例えば、令和8年4月10日に区分所有法第63条第1項の催告が到達した場合、催告に対する回答期間満了日は令和8年6月 10 日であり、売渡請求権を行使できるのは令和8年6月11日から令和8年8月10日までとなります(民法140、141、143②)。
なお、期間の末日が日曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合に限り、期間は、その翌日に満了することになります(民法142)。
売渡請求に応じない者への対策
売渡し請求権は、「形成権」であるため、売渡し請求の意思表示が相手方に到達した時点で売買契約が成立し、区分所有権及び敷地利用権が売渡し請求をした者に移転します。売渡し請求をした者は、買主として代金支払い義務を負い、売渡し請求を受けた者は、売主として専有部分の引渡し及び区分所有権等の移転登記手続をする義務を負います。これらの義務は、同時履行の関係に立つことが原則です(民法533)。
なお、売渡し請求を受けた者が、明け渡しによりその生活に著しい困難が生ずるおそれがあり、しかも決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないと認められる顕著な事由がある場合には、1年を超えない範囲内で建物の明け渡しについて期限を許与するよう裁判所に請求することができます(区法63⑥)。
以上の建替え等の不参加者に対する売渡し請求は、区分所有法に基づいて行うほか、マンション再生円滑化法に基づいて再生組合から請求することもできます。マンション再生円滑化法では再生組合の設立認可公告後に、建替え等の不参加者に対する売渡し請求の手続きを定めています(再法15)。
売渡請求における時価とは
売渡し請求における「時価」は、売渡し請求を行使した時点における、区分所有権及び敷地利用権の客観的な取引価格です。
建替えの場合





① 建替えた後の価値から逆算する方法
「完成した新築マンションの価値」ー「建てるのにかかった費用」
② 土地の価値から逆算する方法
「更地としての土地の価値」ー「今の古い建物を壊す費用」
①と②の計算結果を並べて天秤にかけ(比較考量)、一番しっくりくる、公平で納得感のある価格を決定しましょう、ということじゃな。
更新の場合
①の額と②の額とを比較衡量して、対象となる区分所有権及び敷地利用権の額を定めることとなります。
① 建物の更新がされた後の建物及び敷地利用権の価額から更新に要した費用を控除した額
② 建物の更新をすることを予定した(現存の)建物及び敷地利用権の価額
売渡請求に関する注意点
売渡請求を行使できる者
行使できる者は、区分所有法で定める「建替え等に参加する区分所有者」と「買受指定者」、マンション再生円滑化法で定める「マンション再生組合」だけです。
二重譲渡・賃借権設定の防止
相手方が売渡し請求の行使後に区分所有権を第三者へ譲渡して登記を備えた場合、売渡し請求の行使者は、区分所有権の取得を当該第三者に対抗することができません(民法177)。
売渡し請求後に区分所有権及び敷地利用権が第三者に譲渡されることが懸念される場合には、不動産の処分禁止仮処分命令の申し立て等を検討する必要があります。
また、売渡し請求を行使された者が、第三者に賃借権を設定させる懸念があるときは、占有移転禁止の仮処分命令の申し立てを検討する必要があります。
賃貸借の終了請求等の手続き
建替え決議等に賛成した区分所有者等は、賃借人に賃貸借の終了を請求することができ、その請求があった日から6か月を経過することによって終了します(区法64-2②/64-5③、64-2②)が、賃貸借の終了により通常生じる損失の補償金を支払うことになります(区法 64-2③/64-5③、64-2③)。



これは令和7年に成立した「マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法」で可能になったことだよ。


マンション再生円滑化法に基づく事業実施の手続き
マンション再生円滑化法に基づく、組合施行によるマンション建替事業等の流れは次のフロー図のとおりです。





な、なんじゃ、まだこんなに先があるのか。
気が遠くなりそうじゃ。この後は「マンションの再生等の円滑化に関する法律」のページへ移動するぞい。









