区分所有法

区分所有法
目次

区分所有法とは

区分所有法は正式名称を「建物の区分所有等に関する法律」といい、1964年(昭和37年)に民法の特別法として交付された法律です。「マンション法」と呼ばれることもあります。

民法で定める所有権では、目的・対象となる土地や建物(不動産)は1個の物であることが必要とされます(一物一権主義)。しかし、建築技術の進歩により多数のマンションが出現し、一棟のマンション内に複数の所有者(=所有権)が存在し、また、一つの建物内でエントランスや廊下や階段等を利用するなど、民法では対応できない所有形態が生じ、区分所有法が成立しました。

 特別法である区分所有法と一般法である民法との関係は、区分所有法に規定されていれば、民法の規定は排除され、区分所有法の規定に従うということです。

戸建てとマンション

区分所有法はこちら e-GOV

区分所有法の強行法規について

区分所有法には、管理規約で別段に定めができる任意規定と、別段の定めができない強行規定があります。
強行規定は以下の通りです。

  1. 共用部分の著しい変更の決議要件のうち議決権数(法17条1項、21条・66条で準用)
  2. 管理所有者による著しい変更行為の禁止(法20条2項)
  3. 規約の設定・変更・廃止に関する決議要件(法31条1項、68条1項で準用)
  4. 集会招集請求権の定数を増加させること(法34条3項・5項、66条で準用)
  5. 特別決議事項について、招集通知に通知されていない場合は決議できないこと(法37条2項、66条で準用)
  6. 管理組合法人の設立・解散決議(法47条1項・55条2項)
  7. 義務違反者に対する訴訟提起の決議要件(法57条~60条)
  8. 建物価格2分の1を超える部分の滅失の場合の復旧決議の要件(法61条5項)
  9. 建替え決議の要件(法62条1項)

参考:一般社団法人宮城県マンション管理士会HPより

区分所有法 改正の経緯

1983年(昭和58年)改正
<主な改正内容>
・共用部分の変更
  (軽微な変更以外:全員同意→3/4以上の賛成)
  (軽微な変更:3/4以上の賛成→1/2以上の賛成)
・規約の変更
  (全員同意→3/4以上の賛成)
・30人以上の区分所有者で管理組合法人を設立
・建替え決議の導入
  (4/5以上の賛成と費用の過分性要件等)
・団地関係
  (団地管理組合の位置付け、団地共用部分の明確化)等

2002年(平成14年)改正
<主な改正内容>
・共用部分の変更
  (通常の大規模修繕:3/4以上の賛成→過半数の賛成)
  (形状の著しい変更を伴うもの:3/4以上の賛成(変更なし))
・建替え決議要件の明確化
  (過分性費用要件、同一敷地・同一用途要件廃止)
・団地内の建物の建替え承諾決議、団地の一括建替え決議の制定
・管理組合法人化の人数要件の撤廃 等

2021年(令和3年)改正
2021年(令和3年)に成立した「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」の成立を受け、42条・61条・63条の3つが改正されました。

  • 42条 集会の議事録について、署名押印ではなく署名で足りるものとされました。
  • 61条 大規模復旧決議後の買取請求の手続きの催告について電磁的方法が可能となりました。
  • 63条 建替え決議成立後の建替えに参加するかどうかの催告について電磁的方法が採用されました。

2026年の改正について

2025(令和7)年5月「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」が成立し、区分所有法が改正されました(施行は2026〈令和8〉年4月)。

改正の背景
わが国のマンションストック総数は2023年末時点で704.3万戸、国民の1割超が分譲マンションに居住しています。
そのうち築40年以上の住戸が136.9万戸に達しており、10年後(2033年)には約2.0倍、20年後(2043年)には約3.4倍に増加するといわれています。

また、区分所有者も高齢化しました。そのため、区分所有者が管理に関心を失ってマンション管理のための意思決定が停滞し、再生についても合意形成が進んでいません。このような状況下で、区分所有法の見直しが求められました。

区分所有法は、1962(昭和37)年3月に制定されたのち、1983(昭和58)年5月に1回目、2002(平成14)年12月に2回目の大きな改正がなされており、今般の改正は、約20年ごとに行われる3回目の大改正となります。

改正の概要
目的1:管理の円滑化
集会の決議の円滑化
所在が不明であったり、連絡がつかない区分所有者 (所在等不明区分所有者)、およびその議決権を除外して集会決議をすることができるようになりました(改正後の区分所有法38条の2。以下、条文番号のみ記載)。
裁判所が認めれば(除外決定)、所在等不明区分所有者の頭数と議決権を、多数決の母数から外すことができるのです。

区分所有建物の管理に特化した財産管理制度
専有部分について、所有者の所在が不明・管理が不十分な場合には、裁判所が選任した所有者不明専有部分管理人または管理不全専有部分管理人が、専有部分の管理を行う仕組みができました(46条の2、46条の8)。共用部分についても管理が不十分な場合に、管理不全共用部分管理人が選任され、共用部分の管理を行う仕組みが設けられました(46条の13)。

共用部分の変更
共用部分の変更(その形状または効用の著しい変更を伴わないものを除く)は、区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議で決するという原則は維持されますが、他人の権利または法律上保護される利益が侵害されるおそれがある場合や、バリアフリーの観点から利便性および安全性を向上させるために必要な場合には、3分の2以上の多数により決定することができるようになりました(17条1項・5項)。

目的2:建物再生の円滑化
建替え決議
建替え決議は、区分所有者および議決権の各5分の4以上の多数による集会の決議で決するという原則は維持されるものの、①耐震性の不足、②火災に対する安全性の不足、③外壁等の剥落により、周辺に危害を及ぼすおそれ、④給排水管の腐食等により、著しく衛生上有害となるおそれ、⑤バリアフリー基準への不適合のいずれか(緩和事由)が認められる場合には、4分の3以上の多数により決定することができることとされました(62条2項1号~5号)。

建物の更新(一括リノベーション)
マンションを再生させるために、建物の更新決議が可能になりました(64条の5第1項)。これにより、建物自体は残したままで、共用部分と専有部分の両方の形状に変更を加えることができます。

一棟リノベーションの例

隣接地・底地の所有権取得
隣接地や底地の所有権等について、建替え等の後のマンションの区分所有権に変換することを可能になりました。



よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次