大規模修繕工事とは
大規模修繕工事とは、一定期間の経過ごとに行う外壁・防水・設備等の複合的な工事で、工事範囲が全体に及び、相当の費用と時間をかけて実施するものです。
一般的には足場を必要とする程度の工事をいい、これを必要としない程度の鉄部塗装工事などは大規模修繕工事とはいいません。
足場建設は工事費用の中で大きなウエイトを占めますので、足場を要する工事(外壁のタイルやシーリング補修など)や足場があった方がやりやすい工事(各戸のバルコニー防水など)をひとまとめに行います。
実施時期はマンションの劣化状況にもよりますが、国土交通省から示されている「長期修繕計画作成ガイドライン」では、修繕周期の例として、1回目を12年目~15年目、2回目を24年目~30年目としています。

大規模修繕工事に向けて~修繕委員会の設置
大規模修繕工事に向けての検討は、複数年度に渡りますが、年度ごとにメンバーが交代してしまう理事会では、継続的な審議ができません。
また、専門的な知識が求められる事項も多く、設計事務所や施行会社等との接触も多くなりますので、通常の理事会業務と並行して行うことは大きな負担となります。
そこで、理事会とは別に、専門委員会として「修繕委員会」の設置が望まれます。
但し、理事会のメンバーが継続して審議できるのであれば、別途委員会を設けずに、大規模修繕工事について検討できるメンバーが役員に就任すれば問題無いでしょう。

標準管理規約では
標準管理規約では、専門委員会について次のように定めています。
第55条(専門委員会の設置)
理事会は、その責任と権限の範囲内において、専門委員会を設置し、特定の課題を調査又は検討させることができる。
2 専門委員会は、調査又は検討した結果を理事会に具申する。
第55条関係コメント
- 専門委員会の検討対象が理事会の責任と権限を越える事項である場合や、理事会活動に認められている経費以上の費用が専門委員会の検討に必要となる場合運営細則の制定が必要な場合等は、専門委員会の設置に総会の決議が必要となる。
- 専門委員会は検討対象に関心が強い組合員を中心に構成されるものである。必要に応じ検討対象に関する専門知識を有する者(組合員以外を含む。)の参加を求めることもできる。
第55条2項で「調査又は検討した結果を具申する」とありますが、すなわち専門委員会は理事会の諮問機関となります。あくまでも決定権限は理事会にあり、委員会は理事会の下部組織となります。
※第4条について:メンバーは義務的な選任ではなく、自発的に参画を希望される方によって構成することが望ましく、当該条文は不適切と管理者は考えます。
「責任施工方式」と「設計管理方式」
大規模修繕工事には、大きく分けて次の3つの業務があります。
①建物診断・改修設計 ②改修工事 ③工事監理
この場合の設計は「図面を描くこと」ではなく、「工事の内容を決めること」です。
工事の発注方式は、設計事務所などのコンサルタントを起用し、施工と設計・監理業務を分離して行う「設計監理方式」と、①~③を一括して施工会社に依頼する「責任施工方式」があります。
| 方式 | ①建物診断・改修設計 | ②改修工事 | ③工事監理 |
|---|---|---|---|
| 設計管理方式 | コンサルタント (設計事務所等) | 施工会社 | コンサルタント |
| 責任施工方式 | 施工会社 | ||
設計監理方式の場合、工事内容・金額について施工会社以外の第三者のチェックが入りますので、無駄な工事の発注をする心配が無くなり、全体的な工事金額を抑えることが期待できます。また、組合員に公明性・公平性をアピールでき、業者選定の際など合意形成が得られやすくなるでしょう。
ただ、戸数が少ない小規模マンションでは、コンサルタント業務費の1戸あたりの負担が大きくなってしまいます。
小規模マンションは区分所有者が少ない分、合意形成が得られやすいというメリットがあります。管理組合で協力し、責任施工方式で皆さんの合意が得られれば、無駄な出費を抑えることができるでしょう。
工事後に不具合が発覚した場合、コンサルタントは管理組合の立場に立って、助言や支援を行うことはありますが、最終的に責任を負う立場にはありません。対応は施工会社との協議に委ねられます。
費用面を考えますと、特に100戸未満のマンションであれば、コンサルタントに高額な費用をかけるよりも、業者選定の際に、ヒアリングなどで信頼できる業者を探す方が優先ではないか、と管理者は考えます。
大規模修繕工事の保証期間
大規模修繕工事保証期間例
※数社の情報から作成しました。目安としてご確認ください。
| 屋上防水工事(漏水) | 10年 |
| バルコニー防水工事(防水) | 5年 |
| 廊下・階段床工事(長尺塩ビシート仕上げ) | 5年 |
| 外壁塗装工事(塗膜の変退色・著しい剥離) | 5年 |
| シーリング工事(漏水) | 5年 |
| 下地補修工事(補修個所の再発) | 5年 |
| 鉄部塗装工事(塗膜の変退色・著しい剥離や錆) | 2年 |
| 天井・内壁面塗装工事(塗膜の変退色・著しい剥離) | 2年 |


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