マンションの外壁工事

外壁工事
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コンクリートとマンションの寿命

管理組合から「うちのマンションはどれくらいもつの?」という質問が良く聞かれます。
財務省令でいう「原価償却資産の耐用年数」による47年(以前は60年)という年数を、マンションの寿命と考えている人も少なくないようです。

しかし、実際にコンクリート系のマンションが寿命を迎えなければならない要因を1つ1つ検証してみると、これらはすべて修繕・改修を行うことによって排除できるものがほとんどなのです。
鉄筋(鉄骨)コンクリート系マンションは、コンクリートと鉄筋(鉄骨)で基本構造が形成されており、お互いの短所を補い、堅牢な建造物を構築しています。
基本的に施工時点での問題がなければコンクリート単体での寿命は半永久的なのですが、内部鉄筋が錆びて腐食することによって、鉄筋が本来持つ役割を保てなくなり、耐力が低下し、限界に至ったときに、初めて構造体としての寿命を迎えることになります。

この内部の鉄筋をいかに錆びさせないようにするか、コンクリートに進入しようとする雨水や二酸化炭素などの外部の悪要因からいかに建物を保護するか、がマンションの維持保全には重要なのです。

鉄筋コンクリート工事については日本建築学会建築工事標準仕様書「第5章 鉄筋コンクリート工事」(JASS5)でコンクリートの適切な材料選択や調合方法・施工標準を定めています。

鉄筋コンクリートの劣化原因と調査方法-中性化

コンクリートは、材料であるセメントの成分が水酸化カルシウムを多く生成し、強アルカリ性 となっているのが通常の状態です。
しかし、空気中の二酸化炭素がコンクリートの表面に接触すると、化学反応を起こして、コンクリートがアルカリ性を失う「中性化」が起こります。

中性化1によって何が問題なのかというと、コンクリートの中に施工されている鉄筋を腐食させやすくしてしまうことです。
アルカリ性のコンクリートの中にある鉄筋では、薄い酸化皮膜である不動態被膜が形成されており、これが防錆の役割を果たしてくれます。
しかし、コンクリートが中性化してくると、不動態皮膜が破壊され、鉄筋が腐食しやすくなってしまうのです。

従って中性化を防ぐには、コンクリート自体のかぶり厚くすることのほかに、コンクリート保護材料で中性化を進行させないことが大切です。

コンクリート中性化の調査方法

コア採取法
コアを採取し、コアの側面に試薬を噴霧し、表面から赤く呈色した部分に至るまでの距離を中性化深さとして測定します。(赤い部分→アルカリ性を保っている部分)

コンクリート中性化試験 コア採取法

ドリル法
コア採取法などでは、小規模ではあるが破壊試験となります。破壊せずに試験が行えるよう(社)日本非破壊検査協会より提案されている方法がドリル法です。
削孔前にあらかじめ試験液を噴霧して吸収させておいた試験紙を削孔粉が落下する位置に保持し、落下した粉が試験紙に触れて赤く呈色した時点で削孔を停止し、深さを測定します。

ドリル法

はつり法
鉄筋の裏側まではつり取り、はつり箇所に試薬を噴霧し、表面から赤く呈色した部分までを中性化深さとして測定します。

はつり法
  1. 化学的には中性はpH7だが、一般的にコンクリートはpH10以下になると中性化と称しています。 ↩︎

鉄筋コンクリートの劣化原因と調査方法-塩害

塩害とは、コンクリート中に浸透した塩化物イオンによって鉄筋表面の不動態皮膜が破壊され、鉄筋の腐食が進行することです。
鉄筋はコンクリートのアルカリ性によって保護されており、中性化が進行しない限り鉄筋は腐食しにくい環境にあります。
しかし、コンクリート中に多量の塩化物を含んでいると、塩化物イオンの作用により鉄筋の被膜が破壊され、中性化を待たずして鉄筋に腐食が生じてしまいます。
一般的に塩害による鉄筋腐食は十数年と短い期間で進行する場合が多く、劣化による損傷が著しいため、建替えをしなくてはならない場合もあります。

塩化物イオンは、コンクリート製造時に材料から供給される内在塩化物と、海水や凍結防止剤等外部から浸透する外来塩化物があり、海砂を十分水洗いせずに使用したコンクリート中では塩素イオンの存在により、鉄筋の発錆が生じやすく、過去に障害事例が報告されました。昭和61年にコンクリート中の塩分量総量規定がされたことで、現在はほとんど見られていません。
海岸地域のコンクリートは、表面に塩分が付着しやすく、海岸線から200mの範囲ではその影響があると言われています。
また、積雪寒冷地の道路などでは、塩化ナトリウム等塩化物の凍結防止剤(融雪剤)が使用されており、その飛来塩化物によってもコンクリート構造物の障害が発生しているため、こうした道路近傍のマンションでも注意が必要です。

調査方法
塩害によるコンクリート構造物の調査では、コア採取法・ドリル法などで深さ方向の塩化物濃度を分析し、鉄筋の発錆限界である塩化物濃度が、コンクリート部材のどの位置にあるのか、また塩化物による鉄筋腐食がどの程度進行しているかを把握します。

鉄筋コンクリートの劣化原因と調査方法-アルカリ骨材反応

コンクリートは本、高いアルカリ性ですが、骨材中のある種の反応性成分がセメントと化学反応を起こし、強力な吸水膨張性を持つアルカリシリカゲルを生成し、そのアルカリシリカゲルが水分を吸水膨張することでコンクリートにひび割れを発生させる、それがアルカリ骨材反応です。
コンクリートは全体積の約70%が骨材(砂利や砂)であり、アルカリ骨材による膨張は構造耐力の低下を招く危険性もある劣化現象であるといえます。

アルカリ骨材反応によるひび割れは、膨張性のひび割れであり、一般的には亀甲状となります。

アルカリ骨材反応が見られるコンクリート

調査方法
アルカリ骨材反応の調査では、構造物の目視調査を行い、ひび割れ・生成物の発生状況・水分供給の有無などを把握します。また、必要に応じて構造物よりコンクリートコアを採取し、生成物の観察や、使用されている骨材の反応性を試験により確認します。
反応性を有する骨材と判断された場合には、今後どの程度膨張が発生するのかを残存膨張試験で確認します。

鉄筋コンクリートの劣化原因と調査方法-凍害

コンクリートの凍害は一般的に水と直に接する機会が多く、気象の厳しい地域に多く発生します。
水が凍結すると拘束の無い場合、約9%膨張します。
生コンが柔らかいうちは、内部の水が分離して上昇しますが、このときに内部に水の通り道(略して「水ミチ」)ができます。
また、コンクリートが乾燥したときには、水分が蒸発し、微細な隙間ができます。こうしてできたコンクリート内部の隙間に水が浸入し、その水が凍ったり溶けたりを繰り返すと、コンクリートにはひび割れや表面の剥離が生じます。これが凍害です。

凍害によるスケーリング(表面剥離)・ポップアウト(円錐状剥離)

尚、ポップアウトは鉄筋の腐食やアルカリ骨材反応でも生じます。

鉄筋コンクリートの劣化原因と調査方法-ひび割れ

「コンクリートにひび割れはつきもの」と言われることがあります。
確かにひび割れの無いコンクリートはまれですし、ひび割れがただちにコンクリートの耐久性に重大な影響をもたらすと言うことはありません。ひび割れはある程度までは容認するのが一般的です。

コンクリートひび割れの限度

ひび割れの原因はさまざまですが、大半は乾燥収縮が原因です。
打設されたコンクリート中の水は、時間の経過に伴って蒸発します。すると、当然コンクリートの体積は減少し、結果として収縮します。

この乾燥収縮は、コンクリートが自由に収縮できる状態にある時は問題がありませんが、コンクリート中の骨材や鉄筋、柱や壁部材などによって拘束を受けると自由に変形できないため、コンクリートに引張力が生じ、ひびわれが発生します。

乾燥収縮ひび割れは、水分の蒸発による体積収縮が原因です。従って、練り水の量を少なくし、コンクリートの強度を大きくするほど、生じにくくすることができます。

調査方法
ひび割れの調査は、目視によりひび割れの形状・幅、発生位置などから劣化原因の推定を行います。目視などで調査することができないひび割れ深さなどは、超音波法などにより測定を行います。
前述のとおり、原因の多くは乾燥収縮によるもので、一般的な建物の場合、発生からおよそ2~3年で収まります。しかし、ひび割れの中には、中性化、塩害、不同沈下など、放置しておくと劣化がすすみ、後に多大な工事費を必要とする場合もあり、原因の推定においては十分な知識と経験を要します。

ひび割れの測定
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