管理費等の未収金

管理費等の未収金
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管理費等の時効

管理費等の未収金について、管理組合が何も対応しないままでいると、「消滅時効」によって権利が消滅し、回収できなくなる恐れがあります。

この消滅時効に関する民法の定めは2020年(令和2年)に改正されました。改正前の民法は、一般的な債権の消滅時効は10年、定期給付債権(賃料や年金など定期的に一定の金銭等の支払いを目的とする定期金債権のうち、期間が1年以下単位で定めた債権:改正前民法169条)は5年となっており、管理費等はこの定期給付債権に当たるとされていました。

改正後の民法では、債権一般の消滅時効が「①権利行使可能時を起算点として10年」または「②債権者が権利行使の可能であることを知ったときから5年」と、新たに②の主観的起算点による時効を定めたため、不要となった169条は廃止されましたが、いずれにしても管理費等の消滅時効は5年となります。

では、時効により債権が消滅しないために管理組合としてはどのような対策が必要でしょうか?

時効

時効の完成猶予

時効の完成猶予とは、時効を一時的にストップするものです。
「裁判外の催告」、具体的には配達証明付きの内容証明郵便で、発送すると6か月間時効の完成が猶予されます。ただ、これだけでは根本的な解決にはなりませんので、その後は時効の更新を目指し、早々に別の手続をすべきです。
以下の「時効の更新」を目指しましょう。

時効の更新

①債務者の承認

債務者が自身の債務を認めることです。たとえば、「管理費の滞納分について支払いを待ってほしい」「分割にしてほしい。」など、自身に債務があることを前提に回答すればこの承認に当たります。
口頭でも有効ですが、のちに争いになった場合に備え、滞納額を記載し、書面で回答をもらいましょう。

②裁判上の請求

裁判所に訴訟を提起し、管理費等の支払いを求める方法です。
訴えの後、管理費等の支払い請求を認める判決が確定すれば、時効期間が更新され、その後10年間、時効は完成しないということになります(民法169条1項)。尚、訴えの却下や取下げにより、確定判決がなかった場合にも、訴えの却下や取下げの時から6か月間は時効の完成が猶予されます(民法147条1項かっこ書き)

③支払督促

金銭の支払いの遅れている債務者に対し、訴訟によらずその履行を求める手続きです。その申立てによって時効の完成が猶予され(民法147条1項2号)、支払督促の確定により時効が更新されます(同条2項)。支払督促における時効の完成猶予、更新の仕組みは②裁判上の請求と同じです。

内容証明郵便について

一般書留郵便物の内容文書について証明するサービスで、一般書留と合わせて利用する必要があります。
オプションで「配達証明」とするかは任意です。

書留とは
引受けから配達までの郵便物等の送達過程を記録し、万一、郵便物等(ゆうパックを除きます。)が壊れたり、届かなかった場合に、原則として差出しの際お申し出のあった損害要償額の範囲内で、実損額を賠償します。
郵便追跡サービスが利用できます。

配達証明とは
一般書留とした郵便物について、配達したという事実を証明するサービスです。

内容証明郵便を作成する際には、次の形式に従う必要があります。

  • 縦書きの場合:1行20字以内、1枚26行以内
  • 横書きの場合:1行20字以内、1枚26行以内(他)

以下のものを郵便局に持参します。

  1. 同一内容の文書 3通(受取人用、差出人用、郵便局保管用)
  2. 差出人および受取人の住所・氏名を記載した封筒

尚、差し出すことのできる郵便局は、集配郵便局および支社が指定した郵便局です。
すべての郵便局において差し出すことができるものではありませんので、あらかじめ差し出そうとする郵便局へお尋ねください。

遅延損害金について

組合員は管理規約の定めに基づき管理費等の支払い義務があり、支払いが滞った場合には、ペナルティとして遅延損害金を請求することができます。

遅延損害金の利率は利息制限法や出資法の対象にならないため、本来は自由に設定できますが、一般的には14.6%と定めているケースが多いようです。これは国税の遅延利率を参考とした利率です。

管理規約に特に定めがない場合には、民法上の法定利率である年3%を請求することができます。

参考①

※遅延税【国税庁HP抜粋】令和3年1月1日以後
(1) 納期限の翌日から2か月を経過する日まで、原則として年「7.3%」
(2) 納期限の翌日から2か月を経過した日以後、原則として年「14.6%」

参考②

利息制限法」は借主を保護するために金銭貸借の一般的に設けたルール
出資法」悪徳業者にならないよう貸金業者に設けたルール

参考③

改正民法(令和2年4月1日)の施行により、「損害金の法定利率は、年5%から年3%に変更され、3年ごとに見直す」とされました。

遅延損害金に関する判例としては、管理費を滞納していた組合員がマンションを売却した場合、マンションの買主に対し、売主が滞納していた管理費の遅延損害金の支払いを認めた事案(東京地裁平成17年3月29日)、
滞納管理費等に係る遅延損害金の年利を30%と定めた管理規約が公序良俗に反しないとされた事案(東京地判平成20年1月18日)があります。

遅延損害金について

理事長が法的手続きを行うために必要な決議

理事長が法的手続きを追行することについて規約の定めが無い
総会決議が必要となります。
裁判所に提出する「理事長の資格証明書」として、総会議事録の添付が必要となります。

理事長が理事会の決議に基づいて法的措置を追行することができると規定されている場合
「理事長は、未納の管理費等及び使用料の請求に関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。」(標準管理規約(単棟型)第60条第3項)と定められている場合は、理事会決議が必要となります。総会決議の必要はありません。
裁判所に提出する「理事長の資格証明書」として、理事会議事録の添付が必要となります。

支払督促について

支払督促は、通常の訴訟手続によらないで、確定判決と同様の効果を持つ「債務名義」を取得し、債権回収を目的に行うものです。

債権の目的が「金銭その他の代替物又は有価証券の一定量の給付」の場合に利用が可能で、簡易裁判所書記官が債権者の申立てに理由があると認めれば、債務者の言い分を調べることなしに債務の支払いを命ずる制度です。(民事訴訟法382条)
債務者から異議の申立てがあった場合(この異議のことを督促異議といいます)は、通常の訴訟に移行します。

手続きの流れ

※1 異議があれば、受領後2週間以内に異議申立書提出
※2 申立期間は、支払督促に対する相手の異議申立期間が過ぎてから30日以内

支払督促は、法的手続きの中でも、管理組合が簡単、かつ、少ない費用で時間をかけずに行える方法です。

しかし民事訴訟法上、支払督促は「合意管轄の定め」が適用されず、未収者の所在地への申立が必要となり、未収者が遠方に住んでいる場合は通常の民事訴訟か、少額訴訟を申立てることになります。
(督促異議の申立により訴訟へ移行する場合は、裁判所に対して移送の申立をし、管理規約に規定された裁判所が管轄裁判所となります。)

少額訴訟について

訴額が60万円以下の金銭支払請求については、少ない負担で、迅速かつ効果的に紛争を解決することを目的として「少額訴訟制度」(民事訴訟法368条~381条)があります。少額訴訟制度の特徴は、次のとおりです。

管轄裁判所
原則として、相手方の住所地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出する。ただし、管理規約に合意管轄の定めがある場合にはそれによる。
一期日審理の原則
原則として1回の期日で審理を終了し、口頭弁論終結後、直ちに判決が言い渡される。このため、訴訟代理人が選定されている場合でも裁判所は当事者本人(又は法定代理人)の出頭を命じることができる。
同一年内の利用回数の制限
同一の原告が同一簡易裁判所における同一年内の少額訴訟手続の利用回数は、10回以内に制限される。
審理の進め方
訴えの提起に当たり、原告が少額訴訟による審理及び裁判を希望し、また、被告(相手方)もそれに異議を申し出ないときに審理が進められる。
通常の訴訟手続へ移行
被告(相手方)は、審理開始までは、通常の訴訟手続に移行させる旨の申述をすることができ、この申述があった時に、通常の訴訟手続に移行することとなる。
申立手数料
申立手数料は、訴額の約1%と低額である(最大6,000円)。このほかに郵便切手代が必要となる。
相手方の適法な異議の申立のあった場合
少額訴訟の終局判決に対して相手方から適法な異議の申立があると、少額訴訟の判決をした同一の簡易裁判所において、通常の訴訟手続によって審理される。
請求認容の判決の内容
裁判所は、原告の請求を認容する判決において、被告の資力その他の事情を考慮して、支払猶予、分割払、訴え提起後の遅延損害金の支払義務の免除等を命ずることができる。

少額訴訟では1回で結審するというメリットがありますが、管理費等の請求訴訟においては通常の訴訟であっても大半が1回で結審され、あまり変わりはありません。
むしろ、少額訴訟の方が事前の準備が通常の訴訟に比べ厄介であったり、職権で分割払いにされたり、遅延損害金を免除されたりする可能性がある点で、デメリットがあるようです。

区分所有法第59条に基づく競売請求

管理組合は、滞納者の管理費等債権について「先取特権」という優先権を持っており、これにもとづいてマンション所有権の競売請求をするという手段が可能です。

しかし、先取特権は抵当権に劣ります。マンションには通常、住宅ローンなどの抵当権が設定されており、推定される競売落札価格からこれらの抵当権付き債権分を支払った後、なお管理組合の請求分が回収される場合には良いのですが、通常は残金など無く、その場合は請求の意味が無いとして管理組合の競売請求は却下されます。

この区分所有法59条に基づく競売請求は、先取特権等の担保権の実行に基づく競売請求と異なり、競売後の配当利益を予定していませんので、このような「無剰余」の場合でも、競売請求が認められる点が特徴です。

59条競売が可能となる要件

区分所有法6条1項は、「区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と規定しています。
これに反する者に対しては、次の請求が認められています。

①義務違反行為の差止め請求(同法57条)
②専有部分の使用禁止請求(同法58条)
③区分所有権と敷地利用権の競売請求(同法59条)

今回は③に関するものです。
区分所有法第59条1項では、
①区分所有者が、前述のような共同利益侵害行為をした場合
 またはその行為をする恐れがある場合
②その行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、
③他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保
 その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき

以上の条件全てを満たしたときに、競売請求ができるとしています。
管理費等の滞納者に対して、59条が適用されるためには、以下の要件が必要となります。

イ.先取特権の行使や、その他財産に対する強制執行等のいずれも効を奏さない。
ロ.著しい不払い状況にある。

イについて、例えば、当該所有マンションに賃借人があり、賃料を差し押さえられる、と言った場合はこれに該当しません。

また、判例では、民事執行手続きにおける大原則である無剰余取り消しの規定(民事執行法63条)を準用しない、例外となるためにはそれなりの調査が必要であり、抵当権の設定金額だけで判断し、現在の実際の債務額を調査していない場合は調査不足であるとして、請求を却下された事例があります。(東京高裁 2006.11.1判決 参考

競売が認められた事例

・約5年半にわたり、遅延損害金を含め約940万円の滞納、総戸数は12戸で1戸の未収は大きな影響を与える。未払い問題は3回目で話し合いによる解決はできないと判断。(東京地裁平成19年)
・約12年にわたり、約2億7,000万円の滞納、未修者は破産手続き開始決定を受けている。(東京地裁平成22年)
・約7年半にわたり、約140万円の滞納、不在者財産管理人が選任されている、(東京地裁平成26年)
・約5年半にわたり、約100万円の滞納、所有者は10年近く特別養護老人ホームに入所し意思疎通ができない。(札幌地裁平成31年)

競売が認められなかった事例

・約5年半にわたり、約170万円の滞納、本人が和解を希望している。(東京地裁平成18年)

事例から、競売が認められるためには、滞納は100万以上、所有者と連絡が取れない、といった事情が必要になります。

59条競売 手続きの流れ

  1. あらかじめ、滞納者に弁明の機会を与える。
  2. 59条に基づく訴訟の提起(競売請求)について、集会で特別決議をする(滞納者も議決権を行使できる)
  3. 集会の普通決議により、管理者又は指定者に「訴訟追行権」(原告となれる権利)を与える。
  4. 管轄(又は合意)裁判所へ競売請求を申し立てる。
  5. 競売請求容認の判決が確定する。
  6. 判決確定後6ヶ月以内に競売の申し立てを行う。

訴えを提起するには特別決議が必要です(区分所有法59条2項で58条2項を準用)。
決議をするためには、あらかじめ当該区分所有者に対し弁明の機会をあたえなくてはなりません(同法59条2項で58条3項を準用)。

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