管理組合の未収金 2
債務名義に基づく強制執行その①~債務名義とは~
管理組合は、債務名義を取得して、これに基づき滞納者の財産に対して強制執行を行うことができます。
法人格のない管理組合では、管理者が区分所有法26条4項の規定により申し立てをすることができます。(26条4項:管理者は規約または集会決議で原告・被告になることができる)
強制執行の対象となる財産は、区分所有権・他に所有する不動産・家財道具など動産、給料、売掛金などです。
この「債務名義」とは、国の強制力によって執行できる請求権の存在・範囲を表示し法律により執行力を付与された文書のことで、判決・調停調書・(裁判上の)和解調書・公正証書などがそれにあたります。
(2009.6)
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債務名義に基づく強制執行その②~債務名義を取得するには~
強制執行を行うための、「債務名義」を取得するには、以下のような方法が必要となります。
①訴訟の提起
債務名義を得るための、もっとも原則的な方法です。
滞納額が140万円以下の場合には管轄の簡易裁判所に、140万円を超える場合には管轄の地方裁判所に提訴します。
※
管轄の裁判所 標準管理規約第68条(合意管轄裁判所)
→組合員と管理組合間の訴訟については対象物件所在地を管轄する裁判所
滞納額が60万円以下の場合には「小額訴訟手続き」が選択できますが、被告が同意しなければ、通常の裁判に移行します。
この裁判手続きでは、原則として1回の口頭弁論期日で判決言い渡しまでのすべての手続きが終了します。判決に対して控訴はできません。
いずれの裁判でも、和解が成立すると、「和解調書」が作成されます。
②民事調停の申し立て
簡易裁判所に対して民事調停を申し立て、調停がまとまれば調停調書が作成されます。
③支払督促の申し立て
滞納額に関わらず、簡易裁判所書記官に対して支払督促を求めることができます。
債務者から異議が出れば、通常訴訟に移行します。
最後まで異議が出なければ、支払督促は判決と同じ効力を有することになります。
(2009.6)
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債務名義に基づく強制執行その③
~区分所有法59条に基づく競売請求~
管理組合は、滞納者の管理費等債権について、一般債権対して「先取特権」という優先権を持っています。
滞納管理費等を回収する方法のひとつに、この先取特権にもとづいてマンション所有権の競売請求をするという手段が思いつきます。
しかし、マンションには住宅ローンなどの抵当権が設定されており、先取特権は抵当権に劣ります。推定される競売落札価格からこれらの抵当権付き債権分を支払った後、なお管理組合の請求分が回収される場合には良いのですが、通常は残金など無く(無剰余)、その場合は請求の意味が無いとして、管理組合からの競売請求申し立ては却下されます。
この区分所有法59条に基づく競売請求は、先取特権等の担保権の実行に基づく競売請求と異なり、競売後の配当利益を予定していませんので、このような
「無剰余」の場合でも、競売請求が認められる点が特徴です。
区分所有法6条1項は、「区分所有者は、
建物の保存に有害な行為その他
建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」と規定しています。
これに反する者に対しては、次の請求が認められています。
①義務違反行為の差止め請求(同法57条)
②専有部分の使用禁止請求(同法58条)
③区分所有権と敷地利用権の競売請求(同法59条)
今回は③に関するものです。
区分所有法第59条1項では、
①区分所有者が、前述のような共同利益侵害行為をした場合
またはその行為をする恐れがある場合
②その行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、
③他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保
その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき
以上の条件全てを満たしたときに、競売請求ができるとしています。
管理費等の滞納者に対して、59条が適用されるためには、以下の要件が必要となります。
イ.先取特権の行使や、その他財産に対する強制執行等のいずれも効を奏さない。
ロ.著しい不払い状況にある。
イについて、例えば、当該所有マンションに賃借人があり、賃料を差し押さえられる、と言った場合はこれに該当しません。
また、判例では、民事執行手続きにおける大原則である無剰余取り消しの規定(民事執行法63条)を準用しない、例外となるためにはそれなりの調査が必要であり、抵当権の設定金額だけで判断し、現在の実際の債務額を調査していない場合は調査不足であるとして、請求を却下された事例があります。(東京高裁 2006.11.1判決
参考)
手続きの流れ
- ①あらかじめ、滞納者に弁明の機会を与える。
- ②59条に基づく訴訟の提起(競売請求)について、集会で特別決議をする(滞納者も議決権を行使できる)
- ③集会の普通決議により、管理者又は指定者に「訴訟追行権」(原告となれる権利)を与える。
- ④管轄(又は合意)裁判所へ競売請求を申し立てる。
- ⑤競売請求容認の判決が確定する。
- ⑥判決確定後6ヶ月以内に競売の申し立てを行う。
訴えを提起するには特別決議が必要です(区分所有法59条2項→58条2項)。
決議をするためには、あらかじめ当該区分所有者に対し弁明の機会をあたえなくてはなりません(同法59条2項→58条3項)。
☞参考:愛のマンション塾>
マンション管理費等滞納対策(4)
☞参考:高層住宅管理業協会発行 マンション管理に係る紛争事例集(H20改訂)
(2014.1)
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管理費滞納者に対する共用部分の使用制限について
あるリゾートマンションにおいて、理事長が、管理費滞納者に対してプール等の共用施設の使用差止めを検討している。理事会の判断でこれを行うことはできるか。
なお、管理規約では「理事長は理事会の決議を経て、義務違反者に対し必要な勧告又は支持若しくは警告を行うことができる」としている。
所見
共用部分の使用方法を定めることは、管理組合の自治に委ねられている事項であり著しく公序良俗に反しなければ、使用制限に関する定めを置くことは可能と考えられる。
本件の場合、まず管理規約に定めを置くことが必要と考えられる。
なお、当然ながら、理事会としては、共用部分の使用を制限する以前に、当該滞納者への督促、法的措置の追行等、滞納金の回収に向けた努力を行うことが必要である。
社団法人高層住宅管理業協会 平成20年度苦情解決事例集より
(2010.3)
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生活保護受給者について
管理費等を滞納している区分所有者が、生活保護を受給している場合、滞納管理費を請求することはできるのでしょうか。
そもそも、生活保護を受けていて、マンションを所有し続けることはできるのでしょうか。
持ち家やマンションに住みながらでも、生活保護は受けられます。
ただし、豪邸に近い家に住んでいる場合は売却を求められます。
厚生労働省の保護に実施要領には「(1)当該世帯の居住の用に供される家屋」について「保有を認めること。ただし処分価値が利用価値に比して著しく大きいと認められるものについてはこの限りではない」とされています。
要するに、最低生活をするのに価値が大きすぎる家は売却を要するが、
そこまで価値はなく、売るよりそのまま所有し続けた方が役に立つのなら住んで良い、という意味になります。
また、
ローン付きの場合は生活保護は受けれません。
理由は、生活保護費がローン返済代に充てるようになる→生活保護費がその人の資産形成をするお金に回される、という考えがあるためです。
ただし、ローンが残っている場合でも、金融機関で猶予されるケース・ローンの残りがほとんどない場合であれば、生活保護が受けられます。
☞参考:
手続きの窓ページ
☞参考:
マンション滞納管理費の回収
(2018.3)
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債権の放棄
いつまでも滞納管理費等を放置できないということで、債権を放棄することが管理組合で検討されることがある。
この場合、次のとおり考えられる。
①法人でない管理組合の場合
法人でない管理組合の場合は、滞納管理費等の債権は区分所有者全員の債権として構成されるため、その債権の放棄は区分所有者全員の合意が必要だと解釈されているようである。
②管理組合法人の場合
滞納管理費等の債権をどのように処理するかは管理組合法人の事務処理に関するものであるので、区分所有法第52条により、集会の決議を経れば法人として放棄することができる。
☞参考:区分所有管理士ハンドブック
(2010.3)
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