マンションの専有部分・共用部分・専用使用部分
専有部分とは
専有部分とは、区分所有権の目的たる建物の部分ですが、専有部分が専有部分であるためには、その部分が、構造上も利用上も独立している必要があります。
「構造上の独立性」とは、仕切り壁、天井、床、扉等によって他の専有部分と構造上区画されていることであり、ふすまや障子などで部屋の間が仕切られている場合は、外部から自由に出入りできるので、構造上の独立性はありません。
「利用上の独立性」とは、独立した出入り口を有し、直接あるいは共用部分を利用することによって外部に通じることをいい、出入りのために他の専有部分を通らなければならない建物の部分には、利用上の独立性はありません。
(2008.10)
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共用部分とは
共用部分とは、
①専有部分以外の建物の部分
②専有部分に属しない建物の附属物
③専有部分とすることができる建物の部分及び附属の建物で規約により共用部分と定められた部分、をいい、
①及び②の共用部分を「法定共用部分」といい、③の共用部分を「規約共用部分」といいます。
法定共用部分とは、「数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分」をいい(区分所有法4条1項)、専有部分以外の建物の基本部分とされる支柱、基礎、天井・床スラブ、屋根、外壁、エレベーター室、玄関ホール、配電室や、専有部分に属しない建物の附属物であるエレベーター設備、電気設備、消防用設備等がこれに当たります。
規約共用部分とは、本来構造上は専有部分とすることができる建物の部分及び附属の建物を規約によって共用部分と定めたものをいい、管理員室、集会室、ゲストルーム、建物内駐車場・倉庫や附属の建物である倉庫等がこれにあたります。
なお、規約共用部分は、その旨を登記しなければ第三者に対抗することができません(法4条2項後段)。
ただし、登記しなければ共用部分にならないという意味ではありません。
(2008.10)
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専用使用部分とは
共用部分でありながら、特定の区分所有者だけが専ら使うことができて、その他の者はつかうことができない部分を
専用使用部分といいます。
また、専用部分を使用する権利を
専用使用権といいます。
専用使用部分は法律等で定められているわけではなく、個々のマンションによっても異なりますが、その例としては駐車場・駐輪場・専用庭・バルコニー・トランクルーム・玄関扉・ポーチ等があげられます。
「専用使用部分」「専用使用権」という用語は区分所有法で使われていない用語であり、標準管理規約ではそれらの用語について第2条で定義しています。
第2条 この規約において、次に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定める
ところによる。
(途中の号は略)
八 専用使用権 敷地及び共用部分等の一部について、特定の区分所有者が排他
的に使用できる権利をいう。
九 専用使用部分 専用使用権の対象となっている敷地及び共用部分等の部分を
いう。
通常、共用部分の管理は管理組合で行いますが、専用使用部分の管理について
通常の使用に伴うものは専用使用権を有する者が行わなければなりません。(バルコニーを清掃する、など)
標準管理規約第21条1項
「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれ を行うものとする。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の用法に伴うものにつ いては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければな らない。」
(2009.6)
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規約共用部分とは
規約共用部分とは、本来、専有部分となるものや物置などの附属建物を、規約によって、特別に共用部分にしたものをいいます。たとえば、マンションの一室を管理人室や住民の集会室にする場合などです。
規約共用部分の登記
規約共用部分の権利関係は、区分所有者全員の共有です。
共有とは所有権を共同で有することですから、本来なら登記記録の権利部の甲区に記録されるはずです。
しかし、これでは非常に見にくい登記になります。仮に区分所有者が100人いるマンションを想像してください。共有の登記を甲区に記録すると、そこには100人全員の氏名・住所、各持分を記録することになります。どう考えても、ごちゃごちゃしてわかりにくい登記になります。
そこで、規約共用部分である旨の登記は、甲区には記録せず、表題部に記録されることになっています(登記法44条1項6号)。
専有部分と共用部分は分離できないので、規約共用部分の共有者イコール専有部分の所有者です。そして、専有部分の所有者は、同じ登記記録の各専有部分ごとの甲区を見ればわかります。なにも甲区に共有者全員の氏名を記録しなくても、共有者の氏名がわかる仕組みになっているのです。
☞参考(BOOK):
「楽学管理業務主任者」
(2012.1)
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専有部分と共用部分との区分
専有部分と共用部分との区分については、これまで裁判上の争いが多く、不明確な点が多い。
①専有部分相互間の境界部分
柱、壁、床、天井等の境界部分については、次の三つの説があるが、「新しいマンション法」(法務省民事局参事官室編 71-72ページ)は、(ウ)説を採っている。
(ア)共用部分説または内法(うちのり)説
境界部分はすべて共用部分であり、境界部分によって取り囲まれた空間部分のみが専有部分であるとする考え方である。
(イ)専有部分説または壁芯説
逆に、境界部分は共用部分でなく、その厚さの中央までが専有部分の範囲に含まれるとする考え方である。
(ウ)折衷説または上塗り説
境界部分の骨格を成す中央の部分は共用部分であるが、その上塗りの部分は専有部分の範囲に含まれるする考え方である。
②基本的構造部分
建物全体を維持するために必要な支柱、耐力壁、屋根(または屋上)、外壁、基礎工作物は、建物の存立および安全に必要な建物の部分であるので、たとえ専有部分内にある場合でも、法律上当然に共用部分となると解すべきである(屋上を法定共用部分とした判例として、東京地判昭42.12.26)。
③管理事務室
管理事務室の携帯は千差万別であるが、それらのうち典型的と考えられるものは次の(ア)~(ウ)までの三つである。
(ア)法定共用部分に該当するもの
「内部に各専有部分を集中管理する消防設備、警報装置等の恒常的共用設備が設けられ、常時来訪者、配達物などを処理をすることができ、受付者の常駐する構造を有している」場合である。
この管理事務室は、建物の構造上、区分所有者全員の共用に供されるべき建物の部分として法定共用部分と判断するのが相当である。
(イ)規約共用部分化が必要なもの
「管理員が居宅として使用し、併せて管理事務を行っている場合であり、(ア)の形態のような管理事務室の構造をとらず、共用設備もない」場合である。
この構造形態のものは専有部分と認められるので、マンション居住者全員のための管理事務室として利用する場合には、規約共用部化を図る必要がある。
(ウ)複合型
「(ア)の形態の構造を有する管理事務室が管理員の居宅と一体を成して管理事務室として使用されている」場合である。
複合した形態であるが、その主たる部分が、(ア)に当たるものは法定共用部分、(イ)に当たるものは専有部分と判断するのが相当である。
④車庫および倉庫
マンション内にある車庫(駐車場)および倉庫には種々の構造のものがあるため、一概に専有部分あるいは共用部分ということはできない。ただし、車庫については、下級審の判例の中には、専有部分と認めたものが多くみられる。
⑤ピロティ
完成された建物内の空間部分としてのピロティは、広場、集会所、ホールあるいは緊急時の避難通路としての用途を有していることから、法定共用部分と考えるのが適当である。
⑥ベランダ(またはバルコニー)
ベランダは、その構造上、各専有部分に附属しているもので、建物の構造によっては、専有部分の一部に属する場合もあると思われる(隣接との境界は約50センチの厚い鉄筋コンクリートの擁壁になっており、避難路として機能していないバルコニーについて、専有部分であると認めた判例として、東京地判平4.9.22)。
しかし、階層式の区分所有建物でベランダの天井部分が上階のベランダの床になっている構造のものは、それが外部に向かって開放されていること、また、これを専有部分と解すると、各区分所有者が勝手に改造できることになり、上下の階に影響を及ぼすことになること、さらには、ベランダは非常時の避難路としての役割を有している場合がほとんどであることから、法定共用部分であると解するのが相当である(バルコニーを共用部分とした判例として、最判昭50.4.10)。
☞:平成28年度マンション管理士法定講習テキストより
(2017.2)
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共用部分の変更
共用部分の変更は、「形状又は効用の著しい変更を伴うもの」は特別決議を要しますが、それ以外の場合は普通決議で変更が可能です。
<工事例>
バリアフリー工事
普通決議
建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずにスロープを併設し、手すりを追加する工事。
特別決議
階段室の改造、または外付けで新たにエレベーターを新設する工事。
耐震改修工事
普通決議
柱や梁に炭素繊維シートや鉄板を巻きつけて補修する工事や構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さい工事。
特別決議
基本的構造部分への加工を要する工事。
防犯化工事
普通決議
オートロック設備設置の際、配線を空き管路内に通したり、建物の外周に敷設するなど共用部分の加工の程度が小さい工事。防犯カメラ、防犯灯設置工事。
IT化工事
普通決議
光ファイバー・ケーブルの敷設工事の際、既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えない場合。
新たに光ファイバー・ケーブルを通すため、外壁・耐震壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元する場合。
計画修繕工事
普通決議
鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事。
その他
普通決議
窓枠、窓硝子、玄関扉等の一斉交換工事。
すでに不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事。
特別決議
集会室、駐車場の増改築工事などで大規模なものや著しい加工を伴うもの。
(2009.6)
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共用部分の持分・専有部分の計算方法
共用部分に対する区分所有者の持分は、規約で別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分の床面積割合によります(区分所有法第14条1項)。
一部共用部分(附属の建物であるものを除く)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、各区分所有者の床面積に算入します(同条2項、4項)。
専有部分の計算方法
区分所有法では専有部分の床面積の計算は、規約で別段の定めをしている場合を除いて、原則
「内法(うちのり)計算」で測定します(法14条3項)。
条文では「床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による」と表現しています。
標準管理規約では「一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。」と表現しています(第7条2項)。
※専有部分の火災保険を検討する場合には、この記載がある場合「上塗基準」と判断します。
なお、建築基準法にもとづいて建築確認を申請する際には、建物の床面積は上記の「壁心」の考え方で計算します(建築基準法施行令2条1項3号)。
また、不動産登記法にもとづいて区分所有建物を登記する場合には、上記の「内法」の考え方で床面積を計算することとされています(不動産登記 法施行令第8条)。
☞参考記事:
6700万円のマンション、火災保険金額はいくら?[All About]
(2008.10)
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